「円安は輸出企業が儲かるからいいことだ」を5分で論破する

わたしが主催しています「21世紀を生き残るための永江 虎の穴塾」では塾生を募集しています。希望者は毎月30分。わたしと1:1でzoomでブレストができます。ビジネスモデルの相談はもちろん、転職や自己PR、招来の方向性などの雑談でもOK。月1のイベントも好評です。年に4回、リアル飲み会

高市政権で大きく円安に振れてインフレ率が上がる?


高市信者は「円安は高市さんのせいじゃない」と言いますが何も知らない証拠です。
現実はこう

総裁選で高市さんが勝利した日から円は下がりはじめました。「赤字国債発行して積極財政」というキャッチフレーズが市場で日本のリスクが高まったと受け止められているからです。

アベノミクスを提唱し、2020年まで2012〜20年に内閣官房参与を務めた元祖リフレ派の浜田宏一イェール大学名誉教授もこのように語っています。週間文春の有料記事なのでまんま貼らずに要約します。
「日本は安売りになっている」“アベノミクス生みの親”浜田宏一氏がサナエノミクスに苦言「今の日本に必要な政策は真逆」

浜田先生が言っているのは以下の3点

・状況が2012年と逆(当時はデフレ・円高、今はインフレ・円安)
・金融引き締め(利上げ)で円安とインフレを止めるべき
・積極財政(減税や給付)はインフレを助長するので抑えるべき

アベノミクスの評価については日本の大半の経済学者はこのように回答しています。

「経済学者を対象とした経済・財政についてのアンケート調査」結果

アベノミクスによって雇用改善などの効果はあったものの円高は改善されずずっとデフレのママでした。皮肉なことにアベノミクスが終わって岸田政権がコロナ禍で延々と鎖国をして円安とインフレが始まったのはこちらで説明しました。
https://www.landerblue.co.jp/64314/

高市さんは就任直後は規制改革にも言及したり徹底した補助金の削減も口にはしたものの、まったくどこかに行ってしまっています。代わりにガソリン減税や178万円の壁に引き上げたり、なんだかんだで恒久的な減税を年3.5兆円決めて、日銀がインフレを止めるために金利を上げたのにもかかわらず市場はさらに円安になり、今日になって軌道修正とも取れる発言

高市首相「無責任な減税しない」、国債発行抑える 単独インタビュー

であるならご本人が成長戦略会議の有識者委員に招請した会田氏が「躊躇無く国債発行」「国の歳出は国債だけで良い」「国のプライマリーバランスは考えなくてよい」と公共放送でまくし立てて円安に貢献しているので早々に更迭されることをオススメします。

この発言は海外ではスクープとして報道され、早速相場は円高になっています。

赤字国債で積極財政と言っている以上、円安に進むのはこれで分かりましたね。

だいたいリフレ派の経済関係者などがSNSで金利を上げるのは許されない。円安は望むところだ、積極財政をすれば経済が回るので円高になるとか適当にまくし立てているのは「高市政権に御用学者として取り立てて貰いたい」と考えているのがみえみえです。国民の生活なんてどうでもいいんだなと思ってみています。

しかし経済学者であるにも関わらず適当なことを言っているのに引きずられ、一般の人まで

円安は輸出企業が儲かるから日本のためである

とSNSでまくし立てているのを見ると、あまりの無知ぶりに目眩がいたします。

日本の製造業はGDPあたりたったの2割

なんか「日本は物作りの国である」という間違った認識に捕らわれている人が多過ぎ。それ、違います。

このグラフは2012年までですが、そもそも製造業が日本のGDPに占める割合は2012年以降少し持ち直しましたがそれでも20%強って感じです。就業人口に至っては機械化、効率化でどんどん減り続けています。

さらに
日本は輸出国ではないんですよ!!!
そもそも全企業で輸出をしているのは2割強程度。

ここからが肝心です
日本は輸出国と信じている人が多いが、実は輸出がGDPに占める割合はずっと少なく世界でも昔から輸出国ではなかった
実は輸出がGDPに占める割合はずっと少なく世界でも輸出国ではなかった。
輸出依存度は2023年は世界順位162か国中126位(2023年)。じつはずっと昔からです
言い換えると、日本は 「輸出依存度が低い方から37番目」(下位約23%)で明確に輸出国ではないです。

実はGDPに占める輸出の割合の推移はこんな感じ。驚くでしょう
1995年:8.82%(最低水準)
2015年:17.589%
2016年:16.119%
・・・・ここから円安・・・・
2022年:21.55%
2023年:21.85%(最高水準)
※2022以降は円安影響で比率が上がった(数量が同じでも名目で比率が上がる)

いままで日本は物作りの国と信じていたあなた。違うんです。残念ですね。だから

円安は輸出企業を潤すから日本の国益のほうが大きい=間違い

ということなんです。

行きすぎた円安はデメリットのほうがはるかに大きい

多くの経済学者の論文を読みますと、もっとも適正なドル円レートは110〜120円としているのが多いようです。行きすぎた円安によって多くのデメリットがあります。

1 インフレによる消費の減退

こちら総務省統計局の今年のデータで先日発表されたもの

令和7年10月の一世帯当たり月間消費支出平均は30万6,872円となり、名目では前年同月比0.3%増、実質では3.0%減

今年の6月あたりから家庭の消費は冷え込みはじめ、ついに10月からはマイナス3%。賃金・所得が物価に追いついていないためで、90%が「来年の物価は上がる」と回答(対象世帯数は8,400世帯(二人以上の世帯5,376世帯、単身世帯3,024世帯))しており、完全な買い控えモードにはいっています。このマインドでいくらお金を配ろうが減税しようが余分な出費はしないですよ。

2 海外からの労働者が来なくなる

こんなに労働人口が足りないのに、ここまで円安が進むと自国に送金できないため外国人労働者はもっとレートの良い国に向かい、日本にこなくなってしまう。すでにベトナム人労働者は減少に向かっているそうだ。要するに他国で雇ってもらえない層が増えれば日本にとっていいことはない。

3 インバウンドが増えても外貨を稼げない

日本へのインバウンドが増えています。インバウンドは輸出と同じく外貨を稼ぐ手段ですが、円安になるということは人数が増えても国益としての外貨獲得が減ると言うこと。本来なら2〜3割高く払ってもらえるものが払ってもらえない。くわえて
「円が安いから来るという層は良い客層ではない」
ということです。高くても来てくれるのがいいお客さんでその逆は騒いだり、そこらで粗相をする人たち。

4 中小企業・内需企業ほどキツい

・原材料・燃料・部品の仕入れコスト増で、価格転嫁できない業種は利益が圧迫→賃上げ余力がなくなる。
・円安メリットがあるのは輸出でも、輸入比率が高いと相殺される。
・物流費・電気代等の上昇で、地方の小規模事業者ほど固定費負担が重い

5 国全体の交易条件が悪化

分かってない人が多すぎますが、円安は輸入価格上昇を通じて、同じ量を買うのにより多く働く構図になります。つまり浜田先生の言う「日本の安売り」です。国内の価値ある資産や人材が相対的に買われやすく、流出しやすくなります。
内閣府資源高+円安の組み合わせで輸入額が膨らみやすいといっています。

結論

ひとことでいうと、「円安=輸出企業が儲かる=日本にとって良い」は主語のすり替えです。輸出企業の一部が得しても、国全体は別です。輸出企業は日本企業の多数派ではなく、大半は国内向け・中小で、円安メリットが薄いか逆風。適正なレートに戻さないと、輸出企業のために他の国民が消耗するという形になります。

ChatGPT 5.2に「1ドル160円と120円で国益としてはどちらがプラスか」を試算して貰いました。長くなりますが結論です。

生活者の実質所得・内需・コストプッシュ型インフレの抑制まで含めるなら、日銀が言うように「交易条件悪化が企業利益や家計実質所得を圧迫し得る」ので 160円は“国益マイナス”になりやすいです。
一方で 160円が“国益プラス”になり得る条件は例えばこの3点が揃うときです:

・賃金が物価より速く上がる(実質賃金がプラス)
・円安が「輸出数量の増加」につながる(為替差益だけでなく)
・エネルギー・食料の国際価格が落ち着いていて、輸入インフレが小さい

この条件が揃わないと、“輸出の一部の得”より“国民全体の購買力の損”が大きくなりやすい、というのが実務的な答えです。


空気がカラカラで999円の温度計と湿度計買いました。かなり加湿器使っても42%しかいかないんです。乾きすぎやろ、日本

タイトルとURLをコピーしました