ニーズを感じよ! 調べてはならぬ

2014年3月20日

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昨日発行したメルマガで大変に面白い質問がございましたので、さっくりと答えました。で、ここで拡大版で解説したいと思います。
質問はわたしのコンサルティングプロセスについて

前半略・・ 現段階で、「市場ニーズを徹底的に調べる事」「自分が顧客になってみる事」が重要になると考えておりますが、その他で、永江様が、サービスを作る際に気をつけていることはありますでしょうか?

すいません。このご質問に対しては、いちからダメだししてしまいました。

新規事業や製品開発のための市場調査の大半は役に立たない

これがわたしの信念です。
大半の日本の大企業、特にメーカー系では、なにか新しい商品を開発したり販売開始する前に、広告代理店などに「調査」を依頼します。下手したら数千万円くらいかかるのが普通です。しかしこうした調査は、たいていの場合なんの目的で行われるのかというと、ズバリ

無能のサラリーマン経営者を説得するため

です。なにか新しいことをしたいと社員がいうと「調査の数字を出せ」という経営者がいるわけ。数字を出して実際にニーズがあるかを示し、自分とか役員会を納得させろと。サラリーマン経営者はリスクを取りたがらないから、仮に失敗したとしても、調査データでは「ニーズがある」と出たんだから自分には責任がないというために要求する。
はっきりいって、こんな無能な経営陣の会社には将来がありませんので転職した方がよろしいです。だいいちこんな市場調査は設問設定で恣意的にいくらでも結果を変えられる。自分の頭で事業の良し悪しが判断できないセンスの経営者ってどうよ。

世界で全く無名だったときのホンダ。1959年に本田宗一郎がマン島のレースで勝とうと決めたとき、社内で市場調査して「マン島で勝ったらバイクが売れる」という調査データがあったのだろうか。これは絶対に無いと思う。当時の社内宣言文読んで欲しい。感動で震えるから。宣言文の最後だけで泣けます。。

全從業員諸君!
本田技研の全力を結集して栄冠を勝ちとろう、本田技研の將來は一にかかつて諸君の双肩にある。ほとばしる情熱を傾けて如何なる困苦にも耐え、緻密な作業研究に諸君自らの道を貫徹して欲しい。本田技研の飛躍は諸君の人間的成長であり、諸君の成長は吾が本田技研の将来を約束するものである。ビス一本しめるに拂う細心の注意力、紙一枚無駄にせぬ心がけこそ、諸君の道を開き、吾が本田技研の道を拓り開くものである。幸いにして絶大なる協力を寄せられる各外註工場、代理店、関係銀行、更には愛乗車の方々と全力を此の一点に集中すべく極めて恵まれた環境にある。同じ敗戦国でありながらドイツのあの隆々たる産業の復興の姿を見るにつけ、吾が本田技研は此の難事業を是非共完遂しなければならない。日本の機械工業の眞價を問い、此れを全世界に誇示するまでにしなければならない。吾が本田技研の使命は日本産業の啓蒙にある。
ここに私の決意を披歴し、T・Tレースに出場、優勝するために、精魂を傾けて創意工夫に努力することを諸君と共に誓う。
右宣言する。

こちらが全文です
http://www.honda.co.jp/Racing/race2002/manx/index.html
あったのは「信念」であって断固として「調査データ」ではない!!

ソニーの故盛田会長はウォークマンプロジェクトを社内の反対を押し切って進めたとき、調査データに基づいたんだろうか。社内が反対の声ばかりだったということは、仮に調査データがあったとしても「ニーズは無い」というものではなかったか。

故スティーブ・ジョブズはiMacやiPodを開発するとき、どれくらいの市場ニーズがあるか調べさせたか。これはもうこの言葉に集約される。

「ベルは、電話を発明する前に市場調査などしたか?」
↓出典

市場ニーズは感じるものであって、調べて分かるものでは無い。そして調べてわかる程度のものは市場ニーズではない。調査する方も、されるほうも、それで答えられるなら一般市民やめてジョブズやってます。

市場ニーズを感じるためにはどうすれば良いか

実はわたくし、バブルの頃に某D社に依頼されまして、現在では日本でも大きなシェアを持つ世界的外車メーカーのマーケット推定資料を創りました。内容的には「今後10年間で日本の外車市場はどうなるか」という概要のものでしたけど、ギャラが少ない割に後々それが使われていて驚いたものでございました。大半は「勘」と「想像力」で書きましたが、けっこうあたりました。まああれを提出するD社の担当者も凄い肝っ玉です。あとから見ますと7割あたりでしたが3割外してました。www

では、どうやったらその「感じる力」が付くのでしょうか。

まずは、情報収集力です。なんにでも興味を持って全てを吸収する力。坂本龍馬ですな。これはそもそも人に元から備わっているかどうかということもあります。物事に関心があまりない人には正直向きません。興味があったら徹底的に調べる。結果として雑学がたくさん身につきます。雑誌とか新聞の編集長は雑学大魔神みたいな人が多いですが、おそらく同様のことをしているはずです。おっさんなのにギャル(死語)トレンドにもめちゃ詳しい人が多いです。

次に必要なのは想像力。顧客視点も想像力の1つです。あれがああなると、これがこうなるからきっとこうだよ、ということが次々と浮かぶ力です。これは別に誰にでも必要です。たとえばベビーシッター事件のお母さんも「時給1000円で24時間対応でどこでも引き取りに行く」というのが実際にどれくらい危険かを想像できたらよかったのにと思います。誰か教えてあげれば良かったのに。こういうことを情報収集力と合わせて学校で教えたらと言う人もいますが、世の中で学校の先生が一番疎い気がしますよ。

最後は物欲です。最近の草食系はクルマもいらないし、海外旅行も行きたくない、というのが多いわけですが、自分が欲しくないものを創って売れるわけも無い。「自分なら絶対買う」「自分なら利用する」という視点があってはじめてできるのです。ただし「勝手な思い込み」を「ニーズを感じている」と誤認する人も多い。というか大半がこちらです。誤認してしまう人は「顧客視点」という想像力が足りないわけです。

そんなわけで、ダラダラ書きましたが、メルマガの読者が伸び悩んでいるので月間324円(4月から)ですのでこの際ぜひ・・www
http://www.mag2.com/m/0001522550.html

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