電子書籍といってもいろいろあるが・・大別してみると

2010年8月17日

さて、電子書籍である。
しかし業界人含め、かなりの人がなにがなんだか分からなくて、十把一絡げに混同している感がある。ネットのリテラシーが低い人が、ブログとツイッターと普通のWEBサイトを混同して区別がつかないのと同じようだ。まあブログもWEBサイトのひとつには違いがないのだが・・。

現在のところ、アマゾンでは日本語の書籍はUSアマゾンで少し売ってるだけだし、AppleのiBook Storeでもデベロッパ申請は受け付けているが実際にはまだ日本語の本は置いていない(ように見えるがどっかにあるのかも・・)。で、分かってないマスコミは「日本ではまだ電子書籍は販売されてない」みたいな報道をするのだが、実際にはとっくの昔からいろいろなサイトで販売されてはいる。ボイジャーという会社(理想書店というブックサイトをやってます)は90年代からやってるのだ。しかし今までたいした人数が利用してなかったのは、ダウンロードしてパソコンで読むのが非常に味気ないし読みにくかったからで、実際私もeBookで何冊か買ったが、読む気にならないので放り出してあった。第一、価格が高くてブックオフで買ったほうがずっと安くて読みやすかったから。この系統の会社は独自、もしくはOEMのビューワーを持っており、これを使うことでPDF形式の本を読ませていたのだが、現在ではEPUBのデータでも販売しており、これならiPadやiPhone、Kindleでも変換すれば読むことができる。
たとえば理想書店だと、高橋洋一氏の「日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える」が印刷版で777円のものが450円で買えて、iPadでもパソコンでも読める。しかし92年設立のボイジャーの売上げはサイトに掲載されているのを見るとたった1億6000万円しかない。90年代から「これからは電子書籍が来る!」と考えて地道にやってきたのは凄いと思うが、ちょっと地道すぎか・・。資本金8億8485万円のebookJapanは売上げ高10億円だからコミック中心とは言え健闘しているとは思うが、アマゾンにいたっては日本法人の売上げはアメリカの10%程度らしく、試算すると年商3000億円である。うち本の売上げの半分ということなので、実際には1500億円(現在は印刷ものだけだが)。紀伊国屋本店と、田舎の駅前の4畳半くらいの本屋くらいの差がある。駅前にばーちゃんひとりで営む小さい書店があって、その前に紀伊国屋ができたらどうなるかみたいな感じだ。

いままで「電子書籍」が注目されてこなかったのは、それを読むデバイスにいいものがなかったからで、iPadやKindleの登場により一気に盛り上がってきただけである。しかし実際に「電子書籍」を買ってみよう、と思い立ったらとりあえずそのデバイスから買おうとするでしょう? パソコンからわざわざebook Japanにいって買って、iPadに読み込んだりするでしょうか。しかしもアマゾンもアップルも決済は1-Clickですよ!(アップルはアマゾンのライセンスを受けている)。いまだからこそ理想書店やebookで買う人もいるし、「売上げ伸びたー」ってリリースもでるでしょうが、本格的にアマゾンやアップルが販売をはじめたら・・・答えは・・・・ではないでしょうか。

で、大きく分けると、いま、「電子書籍」と言われているものには3種類ある。
今号のMdNでも3分類していたが、わたしとは少しだけ違う分類になっていた。

1 PDF型

印刷データに使用するPDFデータを販売するもの。中にはスキャンデータを販売しているところもある。i文庫のようにiPadやiPhone用に開発された高性能のビューワーを通して見ると文庫本ならかなりちゃんと読める。しかし文庫本でもebookのように単にスキャンされたデータをそのまま売っていたりすると、iPhoneで読むと1ページの文字が異常に小さくて読めたものではないし、全体を写真のように見ているので、文字を大きくすると全体も大きくなってしまい、行の上下が切れたりして読めたものではない。雑誌にいたっては、この形式ではサイズが小さいものならいざ知らず、大判の雑誌だといちいち拡大しないと文字が読めない。ということで、自分としてはあくまでも過渡的なものだと思います。
この書式で販売するとすると、上記のほかパブーとかでも自主出版のものも扱ってくれる(売れるかどうかは別)が、app storeの場合はこれをアプリ化しなくてはならない。そのASPサービスも出始めたが、現在のところ256ページ+表まわり4ページ合計260ページのPDF版の本をアプリ化するのには30万円くらいかかる。仮にapp storeで販売するとして、315円なら印税は220円なので、回収するのに1500部も売れないとならない。まあこれはPDFとしての販売ではないので、正確には3のアプリ型になるわけだが。

2 EPUBをはじめとするいろいろな電子書籍用フォーマット

EPUBのような専用に設計されたフォーマットだと、文字の大きさを自由に変えられるし、それに応じて行替えも変わるので読みやすい。しかし日本の出版界が電子出版に及び腰だったためか、EPUBでは日本語対応がほとんど考えられてないのは報道の通り。縦書きもできない。横書きでいいじゃんっていう人もいるかもしれないが、ブックオフでも文庫本で一番高いのは「時代小説コーナー」なんである。池波正太郎や藤沢周平を横書きで読まされたら味もへったくれもないです。このあたりのバージョンアップまではあと2年くらいかかるという噂・・ハァ

↓こんな感じで見ることができます。拡大は要クリック

3 APPとしての電子書籍

アップルの電子書籍販売は、iBook storeとapp storeの二本立てで、別事業部門になっている。現在のところまだiBookでは日本語のものは売られていない(たぶん)ため、必然的にapp storeでアプリケーション化されて売られている。だが、「カイジ」や「ドラえもん」シリーズが上位を独占して大ひんしゅくになったせいか、アップルは同タイトルのものを別アプリとして登録するのは今後まかりならんという通達を6月に出しました。つまりドラえもんならひとつにまとめて、アプリ内で課金しろということです。これはユーザーとしては歓迎ですが、OZマガジンのように6月号、7月号と出していたものも今後は認められず、OZマガジンとして出して、追加分はアプリの中で課金して売れ、ということになりました。まあそもそも漫画をスキャンしてPDFにし、appとして販売していたこと自体がどうよ、という気もするので、これはこれでいいと思います。表紙だけ動かしてあとはPDFで毎号アプリとして販売というのも正道ではないと思うし。

本来のappは、インタラクティブな要素を含んだものであるべきで、ユーザーが行うなにかの動作によって反応したり、音や動画を含んだものであるべき。音読本や、読者の選択でストーリーが変わっていく本など、いままでの印刷では実現できなかったものを追求していくべきなのではないだろうか。
もっともこれには単にInDesignいじれるデザイナーのレベルでは手が出ず、完全にプログラマーの手を借りなくてはならないのでMdNの言葉を借りると「敷居が高い」のである。ということで、自分はここで勝負してみたいと思ってます。参入障壁の低いところでたたき合いしてもしかたないしね。

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