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目次
どうして高市さんは財政出動したいのだろうか。不思議だ

高市さんが総裁指名選挙に勝ってから、どんどん円安になっています。

これをSNSに投稿すると多くの知ったかぶりの高市信者が「日米の金利差によるものだ」とリプを付けてきましたが、日米の金利差はこのように縮小しています。

このグラフのあと、10月28〜29日のFOMCで0.25%引き下げられて、3.75〜4.00%というレンジになり、その後11月は会合がなく据え置きのままなので、2025年12月2日現在もこの水準です。つまりこのグラフよりもっと金利差はなくなっている。だからそもそも高市氏が総裁になってから円安になるのはこの理屈ではありません。
高市信者は認めたくないでしょうが
市場が
「高市=積極財政+金融緩和寄り」と受け止めて
→ 日銀の利上げが遅れる・金利差が開いたままと予想
→ 円売り・株買いの「高市トレード」になった
ということは確実だし経済誌もそのように書いています。常識です。
日本の国債も金利が高騰(入札なので金利が高騰するということは不人気で高い金利でないと買ってくれないということ)し、10年の短期でもどんどん上がってきました。
「すべてのポートフォリオマネージャーがガチでビビるべきチャート」
日本の10年国債利回りが、ついに1.84%に到達。
2008年4月以来の高水準。
たった1日で11.19%も急騰した。
これが何を意味するのか、ちゃんと理解してほしい。… https://t.co/l8BrEYtdtf pic.twitter.com/X5Uz0HWDjm
— 米国市場これ読んどけメモ (@Market_Letter_) December 1, 2025
なんと本日はそのあと1.859%まで急上昇

連動して住宅ローンのフラット35の金利が先月よりも0.07%上がって1.97%に。久しぶりの急上昇です。高市政権成立と関係しているのは間違いないです。
1. 政府が金融正常化を拒否
2. → 金利差は永続する
3. → 円は持っているだけで損する通貨
4. → さらに円安が進む
5. → 政府はまた財政出動でごまかす
6. → インフレ率は高止まり、円建て購買力は低下
7. → →結果として 将来の円はもっと価値が下がる と予想される
この「未来の円の価値下落予想」が現在の円売りを強める。
山形大学田北教授のFacebookから
経済学者で財政出動で経済がよくなるという人はほとんどいない
そしてここからが本題です。
「経済学者を対象とした経済・財政についてのアンケート調査」結果
世界標準の最新研究を多く担ってきたであろう大学・研究機関から経済学者の対象者を抽出し、いろいろな認識を確認した調査です。まずここで驚くのが

半数の経済学者が日本経済の成長は困難であると回答していることです。そして財政出動をすれば経済が回復すると言う人はたったの3%しかいない。やるなら構造改革と4割近くが言っている。規制緩和です。
他の質問「日本経済の現状を考えてやるべき事の優先度」を訊いた設問でも

規制改革が圧倒的で、財政出動を最優先に挙げたのは4%と非常にマイナー。全体では財政出動は5位でもっとも優先度が低い。つまり「財政に余裕があったらやればいいんじゃないの」レベルです。
ではなぜ高市さんはじめ政治家は、1円もかからない規制緩和に殆ど手を付けず、赤字国債を発行して円安からトリプル安の大リスクがあっても財政出動をしたがるのでしょうか。
高市氏の場合はまず取り巻きが悪いと思うんですけどね。

こういうトンデモな人たちや究極の超リフレ派の高橋洋一ばかりでなく、きちんとした経済学者の意見を聞くべきだと思うんですよ。アベノミクスからいままでリフレ派のいうとおりにして経済良くなってないんですから・・・・
財政出動は「写真に写る政策」、規制改革は「写りにくい政策」
政治家にとって一番大事なのは、冷酷に言えば「選挙で勝つこと」です。
そのときに使いやすいのが 財政出動・減税 です。
「○万円給付します」
「ガソリン税を軽減します」
「電気代補助します」
これは すぐに有権者の生活に届くし、テレビのニュースにもなりやすい。街頭演説でも一言でアピールできます。
一方で、規制改革はどうでしょう。
医療・介護の参入規制を緩和
建築規制を徹底的に見直す
農業の企業参入を本気で進める
既得権の強い業界の免許制度を見直す
こうした改革は、短期的には痛みが先に出ることが多いです。既存事業者からは猛烈な反発、雇用調整が発生、地元の業界団体・組合が怒りますよね。
しかも、規制改革の成果は 5年後・10年後にじわじわ効いてくる タイプのもので、選挙ポスターに書きにくいし、「俺の改革でGDPが何%上がった」と証明するのも難しい。少子化対策と同じです。
痛みは未来に押しつけ、メリットは今もらえるのに飛びつく国民
財政出動や減税にはもちろんコストがあります。
日本はすでに「一般政府債務GDP比が世界最悪レベル」ですよね。

東京財団のアンケートでも、財政赤字を「大変な問題」「ある程度問題」とする経済学者が 86.5%
「このまま借金が増えれば、増税・歳出カットなど厳しい財政再建が必要になる」と予想する人が 44.3% と、多くの研究者が将来のツケを懸念しています。
しかし・・・・・
ツケを払うのは未来の有権者(若い世代)
票をくれるのは今の有権者(高齢層・既得権層を含む)
というズレがあります。政治家からすれば、
「今の有権者には配る。将来のツケは、そのときの政治家と国民が考えればいい」
というインセンティブがどうしても働くわけですよ。
財政出動は「利害誘導」の道具として便利
財政出動にはもうひとつ重要な側面があります。
それは、特定の業界・地域に「狙って恩恵を配れる」 という点です。
公共事業 → 建設業界
農業補助金 → 農協・農家
エネルギー補助 → 電力・ガス・関連企業
観光支援 → 地元の観光業・バス会社・ホテル
こうした 「分かりやすい利害誘導」 は、選挙のときに強い味方になります。一方で、規制改革は多くの場合、
新規参入企業にはプラス
既存業界にはマイナス
という構図が多く、既存業界=組織票の塊を敵に回しやすい。政治家にしてみれば、
「オレが動けば動くほど、応援団を怒らせる。これではやる気が出ない」
となりがちです。
イデオロギーと「物語」の問題で財政出動は語りやすい
高市氏を含め、「積極財政」「減税・バラマキで景気回復」を掲げる政治家は、しばしば次のような物語を好みます。
「デフレだから、政府がカネを出せば需要が増えて景気が良くなる」
↓
「国債は将来世代の負担ではない。国内で回っているだけだ」
↓
「国は家計と違う。いくら借金しても大丈夫だ」
これは、直感的で、耳に心地よいストーリーです。一方、経済学者が描くストーリーはこうなりがちです。
「短期の需要不足期には財政出動もある程度意味があったが、今の日本は労働力減少・生産性停滞がボトルネック」
「構造問題を放置したまま財政出動を積み増しても、潜在成長率が低いので持続的成長にはつながらない」
「債務はGDP比で見れば限度がある。今後は歳出改革と増税・規制改革を組み合わせないと持たない」
正しいかどうかは別にして、メッセージ性で負けがちです。頭が悪いと理解できないのです。
アンケートでも、経済学者は過去の財政政策の効果については「効果は乏しかった」が多数で今後は「企業の生産性向上に資する政策」「規制改革」「財政再建」を重視するべきと回答していますが、
こうした専門家の地味なメッセージは、「派手な積極財政の物語」にどうしても埋もれやすいわけです。
規制緩和の経済効果をChatGPTに試算して貰った
上記のように財政出動はたいした経済効果はない。去年の5兆円の定額減税も経済効果は0(野村総研)
しかし規制緩和は1円もかからずに大きな経済効果が望める。
・都会の容積率や建ぺい率や用途規制を規制緩和すればビルの建て替えラッシュが起きる。
・ライドシェアを解禁すればサラリーマンは気軽に副業ができ、バスが廃線になっても高齢者のために高いコストで自治体が交通手段を用意することもなくなる。
・解雇規制や賃金は労働者の承認がないと下げられない規制を撤廃すれば労働力の流動が起きる。
・副業を認めないのは違法にする。公務員もOKにいる。
・高齢者の就労意欲を削ぐ年金・雇用保険の仕組みをなくす。
・医師にしかできない行為が多すぎるから看護師や薬剤師でもできるようにする。
・紙・ハンコ前提の法令・業界ルールを撤廃。デジタル対応を義務づけ。
・小規模賃貸や民泊の緩和、「年収の壁」を無くす(控除の撤廃)
・農地を大企業が取得できるようにする。
などなど・・・
ChatGPTの試算では経済効果は
労働市場・女性・高齢者・外国人 +7%
都市・土地・住宅・モビリティ +2%
医療・介護タスクシフト +1.5%
デジタル行政 +1.5%
合計約80兆円
いまの名目GDPが610兆円とすると、将来の平常時のGDP水準:おおよそ690兆円(+80兆円)
と、すばらしく経済が伸びる。
もう政治家みんなクビにしてAIでいいんじゃないの、これからの日本
維新の音喜多元参議院員、自民の藤末元参議院議員、立憲の中谷現役議員と書いた政策本です。尾崎行雄大賞も頂きました。


