漫画家の佐藤秀峰氏に見る経営者としてのセンスが凄い

2017年4月5日

本日はメルマガとnoteの日。

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3 ホームインスペクション分野の将来性は
4 画像キャプチャは著作権侵害にならない?
5 Twitterでバズった商品の今後の販売戦略とは
6 「介護」×「インターネット」分野の可能性について
7 SIMフリーで使えるおすすめタブレットは?

です。まぐまぐ!またはBLOGOS、スマホで読む方はnoteでお買い上げいただけます。関係ないですがついでにInstagramもフォローしていただけると喜びます。フォロワー5000人の道は険しい・・・。

さてと。良い本を読みましたのでご報告します。
しかもKindle版は0円です。


漫画貧乏

佐藤秀峰さんは、「ブラックジャックによろしく」を無償化して、しかも著作権放棄して二次利用をOKにした。要するに「どんなパロディにしてもいいから自由に使って」ということだ。これには実はぶっ飛んだ。が、この成功で、いまではこの間紹介したマンガルーみたいなサービスも生まれたわけです。経過については佐藤氏自身がnoteに書いている。

「ブラックジャックによろしく」二次利用フリー化1年後報告 前編 note

紙の出版業界は息も絶え絶え

佐藤氏が書いているように、いまや出版業界は息も絶え絶えである。

ざっくりいって新聞や雑誌は、印刷コストの半分を売り上げで稼ぎ、残りの半分を広告で稼ぐというビジネスモデルが基本だったのだが、いまや新聞・雑誌の広告はネット広告に取って代わられた。新聞と雑誌足してもネット広告の6割に満たない。テレビ広告は実は若干伸びてるし、まだネットよりずっと多い。
2016年の広告費
新聞 5431億円
雑誌 2223億円
テレビ 19657億円
ネット 13100億円
PR  21184億円

電通 2016年日本の広告費

この話はいつも書いてるのだが、リテラシーが高く「情報を自分から取りに行く層」は、早く情報を得ることができるネットの依存度が高まり、ネットに移行した。こうした層は知的レベルや収入も高め(もちろんテレビに比べての話)だからネット広告に多くの予算が割かれるようになった。が、自分から情報を取りに行かないというか、そもそも情報というものにあまり興味がない層(専業主婦とか高齢者)は、あいもかわらずテレビで十分なのだ。これで完全に棲み分けができてしまった。

もちろん、情報リテラシーの低い層向けの雑誌もあったが(女性××みたいな・・・)、活字を読む習慣が失われるとともに、同じ運命を辿った。2000年代くらいまでは「女性誌だけは生き残る」といわれていたが、それも単なる錯覚であったことが明確になっている。マンガも同様で、1995年をピークにシュリンクしている。

ではこの環境で新聞社とか出版社はどうしてるのかというと、大半のところはビジネスモデルの変革もできずに、茫然と指をくわえてみているだけだ。いままで何社かの大新聞社に呼ばれて話をしたが、経営陣が 「本や雑誌や新聞を読まなくなった日本人はけしからん」とマジ顔でいうだけで、具体的な手が打てないというのが共通した感覚。マーケティングセンスを求めても無駄ですよね・・・・。

で、漫画家さんとかイラストレーターとか作家とか監督とか画家とか、いわゆるクリエイティブ系の方達は、「お金は創作の妨げになる」くらいの勢いで、自分はいくら稼いでいるとか、お金について語るのがイヤらしいことだと思ってる人が多いでしょ。「こうやって儲けるんだ」みたいなことをいうのは経歴に傷が付くと思っている。自分が知る限り、こうしたことに堂々と言及するのは佐藤氏とサイバラさんくらいのものです。でも、「お金を稼ぐ」って大事なことだよ。好きだからお金にならなくてもいいとかいってると、持続できない。

マンガもクリエイティブワークも制作原価はちゃんとある

Webサイトの制作にあたっても、素人に毛の生えた程度の人が1人でやってる格安制作会社と、ディレクターからエンジニアまでスペシャリストが分業作業で行う場合では、素人がぱっと見に同じに見えたとしても、実際には相当な開きがあります。同様にコストも10倍以上差が開くわけですよね。田舎の中小企業のオッサンとかはそれがわからない。
「もらった原稿と写真をそのまま流し込む」のと、目的を明確にして設計し、検索エンジンに最適化しながら内容を煮詰めていくのでは必要とされる時間が全く違う。ましてやスペシャリストであれば時間単価も高くなるので合計金額が高くなるのです。

ところが、この「原価の計算」を創作、つまりクリエイティブな世界ではしてはいけないことになってるのではないか。芸術もそうだけどアニメとかも同様。作品を作るのに「材料の原価がいくらでかかった時間は述べ×人で合計×時間だからいくら」とか計算しないでしょう。

佐藤氏が連載マンガの原価を計算してみると、原稿料では赤字。なので、スタッフの給料を上げるために原稿料の値上げを交渉すると、モーニング側(講談社)は単行本累計発行部数が1000万部を超えているのに「作家は原稿料に不満があれば仕事を断ることができる」と回答。しかし当時のモーニングの原稿料平均が31680円なのにたいし、佐藤氏のそれは23000円。で、しばらく休載・・・・・。当時は毎週モーニングを読んでいたのでまさかこれが原因とは思いませんでした。

ここらからのモーニング編集部との信頼関係がガラガラと崩れていく様が凄い。まさにブラック・・・・

ほとんどの人はここまで頑強に信念を持って交渉しない。ほとんどのケースでは「長いものには巻かれる」か「黙って去る」を選択してしまう。講談社にとって佐藤氏は「めちゃくちゃ手のかかる面倒くさい奴」だったに違いないが、逆にいえばここまで理詰めに返されると、不条理がわかっているほうは回答ができない。だからずっと回答を誤魔化してるわけだ。

佐藤氏は経営者感覚があった

のである。間違いない。

佐藤氏に見る経営者に求められる資質

いくつかあると思うんだけど、これはまず

1 自社製品(サービス)の独自優位性を確立

佐藤氏のマンガはほかにはないテイストと取材力があり、似たようなのを描けと言ってもなかなかできる作家はいないだろう。炬燵ブログならぬ炬燵マンガみたいに取材無しで描いてる作家さんは多いと思うが、綿密な取材の上で構成していける人はそうそういない。
そういう意味では、出版社に対して強い姿勢で臨める。

この逆パターンは池井戸潤の小説に多く出てくるのだが

1 メーカーの下請けやってる
2 価格を下げないとほかに切り替えるぞと脅される
3 仕事を切られると倒産するのでなくなく赤字でやる

みたいな流れで潰された町工場はたくさんあるでしょう。でもこれは「自社でしかできない優位性」がないからです。優位性を追求するには努力はもちろん、投資や勤勉さ、そして優秀な従業員も必要になるわけだが一番必要なのは社長の才覚です。

2 営業力と交渉力

営業力がない場合、取引先から無体な条件を突きつけられても泣く泣く受けるしかない。しかし営業力があれば新規取引先に鞍替えできる。無体な事を言ってきた元の取引先の競合に寝返ったっていいのだ。それで相手に痛い目を見せてやれば良い。しかしその前提には1の「独自優位性」がいるのです。コレがないとどこにも相手にされない。

佐藤氏と講談社との交渉など普通の漫画家だったら「いままでお世話になったし」とかで諦めてしまうのだが、実は仕事にお世話もへったくれもない。お世話した分の見返りがあるから面倒見てたわけで、それに恩義とかはないんです。まったく見返りがないのにお世話してくれたのであれば感謝したほうがいいけど、仕事としてのお世話はギブアンドテイクですよ。ここがクールにできるって凄いと思います。
ちなみに移籍した小学館のビッグコミックスピリッツ。自分は物凄く前にスピリッツにコラムを連載していたことがあるので懐かしいです。ww

3 お金(数字)を解析する力

実は自分にはコレがありません。www
経理書類とか見るのもいやなんです。だから会社は二度と大きくしません。勘弁して下さい。
クライアントの収支には興味があって試算表も見るんですが自分のには興味ないんです。

で、佐藤氏の「漫画貧乏」を読んでいると、淡々と経営についての指標を試算しているのだが、実はできるようでいてなかなかできないの、これ。自分を含めてほとんどの中小零細の経営者って、年度が終わって始めて「ああ、これだけの売り上げでこれだけの利益(赤字)なんだ」みたいな感じで、3カ年計画とかきちんと算出して、それに沿って投資をしていくなんていうのはほとんどいないんじゃないだろうか。

しかし、「3年経ってみたらうちも大きくなって儲かるようになったなぁ」というのと「自分の計画通り3年やってきてきちんと利益が出るようになった」は、まったくもって意味合いが異なるのであります。

逆に笑ってしまうのが講談社の側の数字を読む力の無さ。毎週のギャラを50万ケチって人気作家が他紙に移籍する損得計算ができない。これってまさにサラリーマンだな・・・・と思いました。サラリーマン根性で経営者に戦いを挑んで勝てるわけないよね。

そんなわけで、佐藤秀峰と実際に仕事したら手強くて大変そうなので別にしなくていいのですが、爪の垢をもらいたいなとは思いました。

おおーーーーっ。本日のKindle日替わりセールには、わが西原先生のコレが来ています。半額以下だもん。買うでしょ。
「高知で一番大きな会社はどこ」
「生活保護」
にはいきなり参りました。でもさ。質問にはけっこう真面目に答えてるんだよね。自分のメルマガより真面目に答えてるかも・・。汗

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