韓流ドラマに見る、簡単な顧客視点の考え方

2010年10月4日

この間、顧客視点について書いたが、良い例を見つけたので解説してみる。

家で仕事をしていると、ちょうど休憩するのが午後2時あたりで、テレビを付けるとフジテレビでちょうど韓流ドラマをやっているのでたまに見る。冬ソナあたりではバカにして見ていなかったのだが、いや、けっこう面白い。今日が最終回だった「アクシデントカップル」は秀逸の面白さだった。日本のテレビドラマが斜陽化して久しいが、比べものにならないんです。

で、一応仕事柄、どこがいったい面白かったのかをマーケディング視点で考えてみた。
新聞などで「韓流ブーム」が語られるとき、大半は「日本では忘れ去られた古風で純朴な愛情表現〜」みたいなことが人気と言われることが多いが、そういうことを書く人は実際には見てないんじゃないかと思います。だってそんな簡単な話じゃないから。また、日本の地上局はいまや55歳以上と中学生がメインの視聴者なので、それに合わせてドラマが作られているというが、それも非常に分かってない気がする。韓流ドラマはいまや国策として無料でアジア各国に供給され、その中で主人公が使っていたサムスンの携帯が売れるのだ。つまり国内ばかりの視点ではないのである。

お金はかけなくても面白い物が作れる

韓流ドラマは日本のドラマと比較して、お金がかかっているかというとそんなことはない。だいたいスタジオとせいぜい野外程度で、FOXやSyfy(ユニバーサル)のように、世界的配信を前提に、映画なみの派手なCGやロケで多額のコストをかけている感じは全くしない。海外物のLOSTとか、24とか、Doctor Houseとか、有名俳優を使って多額のコストをかけて撮ってるものが面白くないわけがない(ま、たまにはハズレもあるが)が、韓流ドラマはセットもチャチいし、カメラも1台だけで撮ってるものが多い。脚本もたいして凝っているわけではない。が、面白い。

わたしの視点でいうと、その面白さは「顧客視点がしっかりしている」ということに集約されるのではないかと思った。サムスンのブランドイメージがソニーを凌駕したのはこのあたりに秘密があるんじゃないか。

たとえば日本のテレビドラマは、キムタクをはじめ、ジャニーズのようなイケメンばかりである。相手も美人。つまり美男美女のカップルが大半。ところが韓流ドラマは主人公はだいたい美男美女ではなくて性格がいい&頑張り屋さん。そして相手が美男美女(またはお金持ちとか御曹司とか芸能人)なのである。これなら誰もが感情移入できる。頑張ればあんなイケメンや美人と結婚できる、みたいなストーリーだからだ。
そして、主人公の職業は、医者や弁護士もたまにはいるが、大半はブルーカラー系の店員だったり、郵便局員だったり、せいぜい通販会社の社員。エリートと言える人はほとんど出てこない。Dr.コトーみたいに元エリートというのもほとんどないみたいだ(そんなにはまって見ているわけではないので見た範囲だけだが)。つまり近いところでは「電車男」みたいな設定が大半なのだ。世の中にはエリートなんて10人に1人くらいしかいないわけで、これなら感情移入できる確率が高い。

そして重要なのは、必ず双方の家庭、家族がからんでくる。いい親とか兄弟ばかりではなくて、倒産して夜逃げしたり、母親が他の男に走ったり、目が見えなかったり、行方不明だったり、ある意味めちゃくちゃ大変な家庭に育っている。恋愛する相手の親とこちらの親、両方が出てきて、片方だけのことなんてない。だって実際に恋愛→結婚するときは双方の親が必ず関係してくるわけだからね。まあ誰もがこうしたことは必ずあるはずだ。
これ、かなり日本のドラマと違っている。東京ラブストーリーでカンチの親はなにしていたか? 全然覚えてない。渡る世間あたりしか親は出てこないけどアレは恋愛ドラマじゃない。いわゆる日本のラブストーリーには全くといっていいほど親なんて出てこないわけです。相当に現実と遊離してますよね。うわべだけなんです、日本のは。

まあ、ほかにもたくさんこういうことが出てくる。思うのは脚本家やプロデューサー、ディレクターが、「見ている人」の感覚を非常によく捉えて、「視聴者が見たいと願うもの」を作っているということだ。日本のテレビ局は高給与で有名だが、明らかにこの顧客視点、マーケティングセンスで劣っていると思われる。これじゃ斜陽にもなりますよ。

でだ。なんでこんなことを書くかというと、商品開発も全く同じだからなんである。ヒット商品を生み出すコツはひとつしかなく「必要とされる」「欲しいと思われる」商品を開発するだけなんである。ユニクロの1万円近いジーンズが大敗して売上げ暴落らしいが、本当にユニクロ製のそんな高いジーンズを欲しいと思う人がいると考えたんだろうか・・・。

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