飲食店や職場は禁煙か喫煙かは勝手に決めれば良いという人は、ブラック企業を認めるのと同義語である

2018年6月7日

先日からブラック企業論争が燃えています。
昨日書いたのコレね

柔軟な思考を持った方が人生はきっとうまく行くよ

しかしこうしたことを考えていくと、ふと

喫煙規制と労働規制は同じである

ということが閃いた。これからはこの論法で行こうと思うので、本日はこの話題です。

従業員への受動喫煙防止の観点から加熱式たばこ規制の議論を―東京都医師会・尾﨑会長

都が新たに提示した条例案で、飲食が可能な加熱式たばこ専用の喫煙室の設置を認めると明記されたことについて尾﨑氏は、「国の法案と整合性をとったと理解している」としつつ、専用喫煙室に出入りする従業員に健康被害が及ぶ可能性があると問題視。12日に始まる都議会の定例会で、「規制を緩めるのではなく、加熱式たばこも規制すべきではないかという議論をしていただきたい」と訴えた。その上で「どう扱うかは都議会の判断だが、医療界としては、紙巻きたばこと同じように規制すべきという意見は変わっていない」と強調した。

従来の禁煙論争では、特に飲食店の場合は「客の健康」ばかりが取り沙汰され、勤労者の健康にはあまり言及されていない。
代表的なのがこの方のような考え方。実はこう考える人は結構多い。


未成年の受動喫煙はあり得ないが、それ以外は店に禁煙か喫煙かを選ばせ、募集要項にも告知して、それでもいいという人だけ採用するようにしたらいい。というものです。しかしこの飲食店の禁煙規制に強く反対している全国飲食業生活衛生同業組合連合会自身の平成24年のレポートを見たら、その前提自体がおかしいと言うことが分かる。

全面禁煙の飲食店は10%もない地域が多数

ってことです。奈良や京都は喫煙率が低いしインバウンドの観光客対策もできているから禁煙店も多めだが、中国・四国では30店に1店しか完全禁煙店はない。つまり募集要項に喫煙店と書いても、応募者は避けられないのである。完全分煙なら客のリスクは減るが、従業員はより濃密な喫煙スペースにはいるわけで全く守られない。そもそも田舎で飲食店くらいしか募集がないケースでは、必然的に禁煙店という選択はほぼないわけです。

ブラック企業論争では自分は「法的規制は当然だが、とっとと逃げ出す自分の危機管理も必要」といってプチ炎上したが、ブラック企業は全体の割合から見たら少ないと思うが、喫煙企業はまだ大半でしょう。土建業や飲食業は職場環境が「禁煙なにそれ、他人事」みたいなのがたくさん。

実は、ブラック企業論争と酷似している

数十年前、自分がリクルートにいた頃と辞めたあと、過労死や、業務が忙しくて検査できず亡くなった方を3人知っている。1人は同期だが、当時は過労死という言葉もないのでそのままスルー。もうひとりは裁判になりました。忍ぶ会にも行きました。


この裁判からかなり改善されていまやホワイト企業と呼ばれているわけだが、当時は

マスコミ、広告、金融は過労死当たり前

みたいなのが常識でした。自分の友人Hは元証券マンで、社内旅行の時に隣の布団で同僚が朝死んでいたのを見て怖くなって退職したし、Facebook友人の元大手広告代理店U氏はプレゼン中に大量の下血で救急車で運ばれたがそれでも最後までプレゼンしたという伝説を残している(書いちゃった・・・)。同じ広告代理店で仲良かったコピーライター某氏も過労死してます。つまりごく当たり前だったのです。

エニックスにいったらデバッグで臭くなった人たちが机の下で累々と寝ていたし、出版社だって似たようなものだった。ようするに当時は

この業界で働きたかったら
もれなくブラック環境がついてくる

状態だったのです。残業がイヤならその業界には行けなかった。月に100時間以上残業とか普通だったし、自分みたいにとっとと片付けて早く帰ると異端視されました。査定は最悪よ。要するに「会社にいつも遅くまでいると頑張ってるから査定アップ」の時代だったのです。

しかしここ10年くらいで急にブラック企業が言われるようになった。一番はワタミの自殺だがこれは2008年だからたった10年前。ブラック企業あかん、行くのはやめようと言われて価値観が大きく変わってまだ10年なんです。電通の女の子が自殺して大変なことになったが、ちょっと前はたくさん過労死してたわけですよ。電通の上司はそのときの感覚のままだったわけ。

じゃあ喫煙率はというと、

男性の全年齢で喫煙率が50%を切ったのが平成14年、つまり2002年です。まだ15年くらいしか経ってないの。いまや男女含めると喫煙者は18%しかいないが、喫煙者がマイノリティになってまだ15年です。

ブラック企業がマイノリティになってまだ10年
喫煙者がマイノリティになってまだ15年

という感じでしょうか。

しかし、いまは違う。特に飲食店は若い女性従業員が多く、喫煙率はいまや5%とかでしょう。なのに喫煙店はその子たちにたいして強制的に受動喫煙させて、肺気腫や心疾患で殺したり、将来生む子供に後遺症を残したりしているわけです。

仮に「従業員がいいといえば喫煙の環境で働かせても良い」ということであるなら、「うちは残業バリバリで休日出勤もあるから過労死の可能性もあるよ」と企業が明示してそれでもいいと言えば働かせてもよいことになりませんか。

そもそもブラック企業ダメだと反対する人は、職場の受動喫煙絶対ダメだと反対してくれないと筋が通らない。ヘビースモーカーの枝野さんとか、まず卒煙してくれないと説得力ゼロです。

問われる経営者の遵法意識

法律では・・・・

健康増進法 
第五章第二節 受動喫煙の防止
第二十五条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

と決められています。つまり事務所や飲食店や官公庁で受動喫煙が発生しているのは違法なんですよ。罰則がなくても違法は違法だし、遵法意識のない組織ということになります。ところが多数の地方議会では喫煙スペースがあるという、マジ馬鹿なの? 自分たちでそこ、掃除してるんですか。議員なら法律守れよと。

だいたい「従業員のために禁煙にしたら店が潰れる」という論法も「社員をこき使えなくなったら会社が潰れる」と同じことです。なぜ前者はOKで後者のみダメなのか。同じじゃん。

で、そうすると、「永江さんはタバコ自体に反対なのか」「タバコ吸うことは法律で認められている」という方がいるが、もちろん勝手に吸ってください。これは

経営者は1日20時間働こうが社員に強制しなければ合法
フリーの人も倒れるまで働こうが自由

と同じで、他人に受動喫煙を強要せず、自分ひとりで吸うのは全くかまわないです。ただ死んだら悲しむのは家族という点は共通しているが、それは家族内で話し合ってください。そこまでは法律は規制しません。

ということで「ブラック企業ガー」という方は、必ず「喫煙企業ガー」と言わなければならないし、自分が他人に受動喫煙させているのに「ブラック企業ガー」ということは許されない。だってアンタ自身がブラック人間なんだからね。

昨日、「やらなくても良いことはしなくてよくするのが仕事のできる人」と書きましたが、どうすればいいのかという質問がきました。まずはこの漫画でもどうでしょうか。

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