核兵器保有なんて論議するのは無意味のわけ

2025年8月19日

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核兵器を保有する論議が出てきたが・・・・

参政党の候補が選挙期間中に「核兵器はコストが安い」とアホ発言し、なにもしらない無知の支持者がそうだ、そうだと言っておりますが、本日は

議論するだけ時間の無駄だから

という話をしたいと思います。

憲法改正の発議は、衆議院と参議院の両院でそれぞれ行われ、各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要です。
国民投票:
国会が発議した憲法改正案は、国民投票に付され、有効投票の過半数の賛成を得る必要があります。

同様に「憲法改正も物理的に絶対できないから」という話はいつもしております。国会の2/3の賛成まではナチスみたいな独裁政権ができたら可能かもしれませんが、国民投票で過半数は絶対無理です。

わたしも憲法改正はできるならした方がよい派ですが、改正賛成が4割いないのに国民投票すれば、どちらとも言えないという層が不安で「いましなくてもいいんじゃない?」に回るので間違いなく廃案になります。

大阪都構想の時の事前の調査は
2020年(11月1日投票)
ABCテレビ×JX通信社(10/30–31実施・未定者除く):賛成 49.2%、反対 50.8%。
朝日新聞×朝日放送(10/24–25):賛成 39%、反対 41%(未定者含む設問)

2015年(5月17日投票)
共同通信(投票1週間前):賛成 39.5%、反対 47.8%。
読売新聞(同):賛成 38%、反対 50%。
朝日新聞(同):賛成 33%、反対 43%。

と、憲法改正と似たような感じですがすべてダメでした。最低でも過半数は超えないと却下になります。

まず技術とおカネ:濃縮→小型化→弾道化は年単位×兆円単位の沼

結論から言うと、技術・法制度・国際関係・経済の全部盛りでコスパ最悪なので、現実路線としては成立しません。理由はシンプルに3つあります。一つ目がコレです

なにもしらない人は、核兵器なんてすぐ開発できるとでまかせをいいますが、実際はこんな感じです。

法的スタートラインが赤信号

日本の原子力は「平和利用に限る」が大原則。ここをひっくり返すには法改正+国会の大仕事が必要。さらにNPTや関連レジームから離脱する政治コストがドカンと乗る。「まずスイッチを入れる」前に大山を動かす必要があります。

(A) 核分裂性物質の確保(濃縮/プルトニウム転用)
日本は民生目的の分離プルトニウムを計44.4t保有(国内約8.6t、海外保管約35.8t)。ただし平和利用縛りとIAEA査察の下にあり、軍事転用は国内法改正・NPT離脱なしに不可能。

技術的には原子炉級プルトニウムでも核爆発装置は作り得ると認識されているが、設計難易度・安全性・予測性の確保が大幅に難しく、実用弾頭に仕立てるには試験データが必要。民生ラインを軍事目的に切り替えるだけでも、施設・人材・保安・秘匿性の再設計で数年スパン。制裁リスク込みで見れば数千億〜数兆円がレンジ

(B) 弾頭の小型化と信頼性
広島に落とされたリトルボーイ

ガンバレル型であった。構造も比較的簡易であり、インプロージョン型よりも基本部分の製造は容易なのだがデカくて重い。積載されたウラン140ポンド (63.5 kg) のうち、たった1.38 %(876.3 g) が核分裂反応を起こしたと推定されているという効率の悪さ。
そしてこのでかさ・・・

当時は制空権をアメリカが持っていたので高高度からB29が侵入して爆撃できたが、いまどきこんなデカくて重い爆弾を鈍足の爆撃機(日本は持っていないから輸送機か旅客機改造になる)に積んでいけば領海に入る前に撃墜される。w
また地面に着くまでに爆発させるのでパイロットは被曝するし墜落しないように必死の特攻になる。あり得ないでしょう。

つまり現代の核兵器は弾道ミサイルになる。弾道ミサイルに載るサイズ・重量まで安全装置込みで小型化し、実戦信頼性まで持っていくには本来は複数回の試験が欲しい。実験を縛ったまま高信頼を出すのは設計リスクがとても高い。
(C) 運搬手段(弾道化)
宇宙ロケットの知見がある=軍用弾道にそのまま転用できる、なんてことはない。指揮統制・即応性・再突入体・硬化シェルターなど、ぜんぶ軍用仕様で再構築。ここも年単位+兆円級。

最短でも7〜10年、現実的には10年超/累計 数兆〜十数兆円規模。しかも試験制約下で信頼性の壁が最後まで残る。投資対効果が悪すぎます。

国際社会との関係:同盟とサプライチェーンを自分で壊す?

●日本の原子力基本法は核技術の利用を「平和の目的に限る」と明記(法改正が不可欠)。
●日本はNPT(核拡散防止条約)加盟国で、離脱には3か月前通告+安保理通知など政治的コストが極めて高い。
●CTBT(包括的核実験禁止条約)を日本は1997年に批准。核実験ができない前提だと小型弾頭の信頼性実証が難しい。

とまあ、このあたりが動き始めると国際社会は制裁をはじめます。

日本の強みは同盟・国際金融アクセス・技術連携・サプライチェーンの信用です。
核武装に進む=不拡散レジームからの実質離脱シグナル。G7/EUを含む制裁・輸出管理強化は高確率。結果として……

金融:ドル決済の制限・格付け下落・資本流出。邦銀の国際業務が詰まりやすい。
エネルギー:化石燃料・LNGの調達条件が悪化。日本の物価と産業コストに直撃。
技術:半導体装置・航空宇宙・サイバーなどのハイエンド技術の対日ストップが現実味。
貿易:相手国の国内政治事情で対日カード化。サプライチェーンの信頼が毀損。

つまり、抑止力を“足し算”するつもりが、国家総合力を“引き算”にしてしまう。ここが一番の致命点ですなあ。

アメリカと敵対するのでもれなくバンカーバスター

まずトランプは日本と韓国の核保有を認めたという人がいますが、もっと米軍基地の金を出せ、何なら自分たちでやるか、核も持つか?と発言したことはありますがそのあとで「そんなことは言っていない」wと否定しています。例のごとくです。

で、日本が本気で核を持つとなると参政党が政権を奪取した時ですが参政党は半分クーデターの形で現行の日本国憲法を停止して自分たちの新憲法を制定するはずです。これは憲法改正では無くてクーデターですね。
で、その憲法には

とあり、日本で正当に取得した外国人や外国資本の不動産を没収するとあります。日本国内の不動産を最も持っているのは米国資本ですから、この時点で日本はアフガンのタリバンやイラン革命の後のイランと同じ扱いになります。つまり

アメリカの敵国

になるわけです。
おまけに安保条約を破棄して自国の軍隊を整備するという極右というより国家神道原理主義者ですから、開発したミサイルをいつ他国に発射するかもしれず、イランと同じく濃縮施設にはもれなくバンカーバスター

そして国会議事堂や防衛省、参政党本部には何十発ものトマホークが飛来すると思います。

そんなわけで、日本が核兵器を開発して保有なんて馬鹿げた妄想ですし、そんなことしなくても暗黙のうちに米軍が日本国内に持ち込んでいるのはもう当たり前です。だいたい空母や潜水艦に積んでる核兵器を日本に寄港する前に下ろすわけないじゃんということですよ。

公文書や米国側の公開資料から、「有事には日本国内に核兵器を持ち込める」という事前了解(密約)があったことが確認されています。2010年、外務省有識者委員会の調査で、「米軍が日本に核を持ち込む場合に日本政府が事前協議で了承する」という密約があったことを認定。

しかし、その後の政府見解は一貫して「現在、日本に米軍の核兵器は存在しない」。www

じゃあ寄港する前に核兵器どうしてるのって話しでしょ。ww

米軍はどの船に核兵器を積んでいるか明らかにしていないが、敵国はまさか日本政府のいうことを素直に信じていないから、日本にも米軍の核はあると思ってますよ。その意味からも日本が核兵器を持つ必要は無い。だって日本攻めるなら真っ先に攻撃するのは在日米軍基地。そこに核弾頭落としたら太平洋上の原子力空母から一斉に核ミサイルが報復のために発射されます。

結論。日本が自分で持つ必要は無いし検討もするだけ無駄
他にやることあるだろ。社会保障削減とか尊厳死を認めるとか。


メディアが報じない戦争のリアル 日本の「戦争力」を徹底分析 (SB新書) Kindle版小川 和久 (著)
わたくし、軍事評論家としては小川直久氏をもっとも信頼してます。本も何冊か読みました。日本は潜水艦と迎撃機に特化した防衛力で米軍と連動しないと機能を発揮しない。つまり安保を破棄して米軍に出て行って貰う= 防衛する気なし、なのです。よきにせよ、わるきにせよです。

ロシアによるウクライナ侵攻により、軍事に無関心だといわれる日本人も、これまでになく国防意識が高まっている。中国が日本を侵略することはあるのか。北朝鮮からミサイルは飛んでくるのか。有事の際に問われるのは日本の「戦争力」である。単純な軍隊による戦力だけではない、地政学的な位置づけから防衛に関する政治力まで、国を守るべき「戦争力」をあらためて問う。

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