東大薬学部五十嵐准教授がDeNAのウェルク(Welq)をさくっと検証した結果(シリーズ第3弾)

2016年11月28日

ますます燃えさかっているDeNAというプロ野球チームも所有する上場企業が運営するウェルクというWebスパムサービスが、「健全な医療活動を阻害」し、「他人の財産をパクりまくって自分のものとする(引用に見せ掛けた転載)」行為ですが、これについてひとこと。

まず、ランサーズやクラウドワークスなどのクラウドソーシングも「最低委託費用」を絶対に設定するべきだと思う。法律ではなくて自主的に、だ。
1文字1円での発注は、「盗んでこい」というのと同じで「泥棒募集します」という広告を掲載するようなもの。こんな金額でまともに取材して書けるわけがない。大規模なパクリ問題の根幹は、それでいこうと考える企業と、仲介をするふたつの企業ともにコンプライアンスに問題がある。両方とも上場してるとか信じられない。

DeNAで高給もらってる中の人たちは、貧乏人をこき使って他人の財産を盗ませ、儲けていると言うことを自覚しているはずだ。ブラックと叩かれた電通だって得意先のビジネスに貢献しているし、ワタミだってすき家だって美味しいものを提供している。が、人を使って盗ませて自分だけ儲けるのはマルチや反社会的組織と同じ。究極のブラック企業じゃないだろうか。こういうサイトに広告出している企業のモラルも疑われる。広告掲載企業にクレーム入れた方がいいレベル。

さて、あまりのひどさにトンデモ科学の人たちには鬼のように恐れられている、医療統計の専門家の五十嵐准教授がレポートしてくれました。Facebookのノートなので許可を得て転載します。ちょっと難しい部分もあるけど、専門家が評価するとこのようになります。
五十嵐准教授の著作はこんな感じ

医学専門家もどき活動家、welq記事を勝手に「監修」してみる 五十嵐中

最近、Welq回りが騒がしい。今までは医療系書きっぱなしメディアに異を唱えても、「両論併記 」「わかりやすい記述」「あくまで個人的な経験ですから」「細かいことにいちいち口出して空気の読めない人」のような扱いを受けるのが関の山だった。
両論併記の「併記」が、真っ当なメタアナリシスと「ぼくが使ってみたすばらしいけいけん1例」を横並びに扱うような、MLBの生涯成績とジャイアンズの空き地野球1試合の成績をそのまま比較する形だったとしても、「一般のみなさまに分かりやすい記述を心がけて…」の名の下にスルーされるような状態。

そのままメディア側から公式見解が出るに至ったのは、それだけでも一定の価値がある。 
https://welq.jp/68890

さて、「公開されている記事について医師や薬剤師などの医学的知見を有した専門家や外部の薬機法等の知見がある専門家による監修を…」とある。今まで専門家はノータッチだったのかとか、「薬機法等の知見がある専門家」が一体誰なのか (弁護士その他法曹資格を持っていればそう書くだろうから、資格はないと思われる)とか、さまざま疑問はある。

ただ、文句ばかり言っていても世間様の役に立ってるとはいいがたい。

一応私とて、薬剤師ではあるし、ある程度の「医学的知見」は有している。調剤経験はほとんどないが、統計やら医療制度やらEBMやらには、ちょいかじり+αの知識はあると自負してもよさそうだ。DeNaやWelqとは何の関係もないが、公式の「監修の依頼を開始しました」を待つだけの受け身の姿勢はよくない。welqの記事を勝手に「監修」してみれば、少しは世の中に貢献できるのではと考えた。もちろん、監修結果をDeNaにごり押しするつもりは毛頭ない。あくまで一「医学的知見を有した専門家(自称)」のスタンドプレーである。

監修にもいろいろある。実質的に「よきにはからえ」で終わるほぼノーチェックのものも、一からリライトするのも、ある意味で監修だ。ちょうどある会社の統計関連のweb記事を監修しているので、それと同じスタイルで進めよう。
 
最近オプジーボ絡みであちこち取材を受けたので、「抗がん剤」をキーワードに選ぶ。welqの検索結果は379件。初めに並ぶのは、Medエッジ由来の論文紹介。多くは単一抄録の日本語訳にとどまるので、こちらは後まわしにして、後ろの方に飛んでみた。ちょうど「30」付近で、気になる記事がひっかかる。

「医療保険制度は改正された!?利用できる3つの機能とは?高齢者の負担増?」
https://welq.jp/27382
※たぶんこのエントリーの公開後に慌てて削除されるとは思います 永江注

このテーマなら、十分私の「医学的知見」が活かせそうだ。なので、勝手監修開始。学生レポートでもそうだが、まずは全体を薄目で概観。「匂う」。匂うのは、コピペの香り。コピペを疑う基準は、私の場合は以下の5つ。

1) 全体の文章で、一部分だけ妙に「こなれた」表現がある (妙に文章がきれい、接続詞の使い方が他と違う、漢字の使用率が異なる、専門用語の多用)

2) 「とされる」「といわれている」「説がある」が目立つ

3) 1)と共通する点で、事実を記述する部分が重い反面、結果の解釈が薄すぎる

4) 細かく見ると、文章の中で矛盾がある (ある箇所で「AはBである」と書き、別の箇所で「AはBでない」と書いている)

5) 全体を通して、ある箇所について妙に詳しく書いているが、その他の点では基本的事項が抜けている

この5条件をある程度満たしたら、文中で一番漢字の多いあたりをgoogleに放り込んでみる。多くの場合はそれでコピペ元にたどり着く。その発想でこの文章をみると、「医療保険制度はどう『ゆう』もの?」のようなサブタイトルを付けていながら、中身がずいぶん堅い。結論を先に書いてしまえば、3つのサイトからのコピペがほとんどなのだが、敢えて中身の「監修」を先に実施してみた。
(面倒な方は下の「急ぎの方はこちらから」までスキップを)

わかりづらいので、以下の様に章番号を付ける。
1章 医療保険制度は難しいことではない!?
2章 医療保険制度とはどうゆうもの?
3章 医療保険制度の2種類の違い
4章 医療保険制度の改正で何か変わったの?
5章 医療保険制度改革法で成立した改正とは
6章 医療保険制度の主な3つの機能
7章 医療保険制度の利点とは
8章 医療保険制度の課題とは
9章 まとめ 医療は誰にでも関係のあるもの! 

<全体の矛盾その1>
1章「医療保険制度は難しいことではない!?」では、医療保険=民間保険+公的保険と分類している。しかし2章「医療保険制度はどうゆうもの?」では、「医療保険=被用者保険+国民健康保険+後期高齢者医療制度」「医療保険は、全ての人が加入する必要あり」と分類。これは公的保険のみに関する記述、定義がおかしい。
3章「医療保険制度の2種類の違い」では、再び医療保険=民間保険+公的保険と定義。以降も定義が行ったり来たり。

<全体の矛盾その2>
2章では医療保険=被用者保険+国民健康保険+後期高齢者医療制度と定義。
3章では医療保険=健康保険と定義。
被用者保険(雇われて働いている人の保険)は、組合健保 (主に大企業)+協会けんぽ (中小企業)+共済組合 (公務員など)に大別される。「健保・けんぽ」は「健康保険」の略称。

だが、自営業者や退職者が対象の国民健康保険 (国保)を、「国民」+「健康保険」と解釈するのはバツ。被用者保険いわゆる「社保・健保」は「健康保険法」由来、国保は「国民健康保険法」由来であり、2つはまったく別のもの。細かい点だが、2章「自営業の人が加入する国民健康保険」も少々疑問。国保の加入者のうち、半分近くを占めるのは無職 (43.9%)で、自営業者は2割強にとどまる。せめて、「自営業者+退職者など」と書かないと、「全ての人が加入する必要あり」の記述と合わない。

<細かい問題点1>
3章:「公的医療保険: 病院の医療費は3割負担」
法規上、病院と診療所は明確に区別される (入院ベッド数20以上が病院、それ未満が診療所)。「医療機関」が堅ければ、せめて「病院やクリニック」とか、「お医者さんにかかるときの」とすべき。また、この後細かい記述が続くのに、「75歳以上の医療費は1割負担、70-74歳までの医療費は2割負担」という超重要な事実を無視して「3割負担」と項立てするのはいかがなものか?

<細かい問題点2>
3章:「公的医療保険: 病院の医療費は3割負担」
「基本的には…整骨院でも、保険を適用させることが出来ます」
整骨院 (柔道整復師の施術)が保険適用になるのは、「急性」「外傷性」のケガで、骨折・脱臼・打撲および捻挫の施術を受けた場合に限定される。なおかつ骨折・脱臼は、事前の医師の同意が必要。現実にはグレーな部分もあるものの、インプラントや金歯・審美歯科を除いて原則保険が効く歯科診療と併記するのは疑問。
厚生労働省の説明

<細かい問題点3>
3章: 「民間医療保険: 健康保険が適用されない分の補充」
「民間医療保険では、歯科治療や整骨院での治療は適用されません。」
※せめて「民間医療保険 歯科」でググりましょうよ。 
保険市場の説明

<細かい問題点4>
4章: 幅広い治療が可能な混合治療の拡充
この項すべて、正しい用語は「混合治療」ではなく「混合診療」。また、混合診療の範囲が広がるが、全面的に解禁されるわけではない。
「未承認の新薬や医療器具を使った、幅広い治療」を保険外で併用して使う制度としては、今までも先進医療制度がある。この先進医療の対象になるためには、医療機関からの申し出が必要。なので、患者からでもリクエストが可能になるように、「患者申出療養」のシステムを新設したもの。
「少ない負担で、先進医療が受けられる」…先進医療は単なる「新しい医療」という意味ではない。上記の通り、医療機関からの申請によって「保険内の技術と保険外の新技術の併用が認められたもの」をさす。「患者申出療養により、先進医療が受けられる」は矛盾。

<細かい問題点5>
5章: 医療保険制度改革法で成立した改正とは
「これは、2009年に、75歳以上は従来の家族の扶養として保険所を使っていた人や、国民保険と老人医療証の人も、「個人」として後期高齢者保険に加入する必要があるという制度です。」
国民保険→国民健康保険。後期高齢者保険ではなく、後期高齢者医療制度が正式名称。突っ込むのも哀しいが、保険所→保険証。

<細かい問題点6>
5章: 医療保険制度改革法で成立した改正とは
「2015年度から国費投入や大企業健保の負担額によって、埋め合わせをしています。」 もともと国保には高齢の退職者が多く含まれる。2011年実績で国保の平均年齢は50.0歳・高齢者割合31.3%に対し、組合健保・協会けんぽ・共済組合は33-36歳で、高齢者割合5%程度。

厚生労働省の説明

国保は所得が低く (保険料が低くなる)、医療費は大きくなるので (医療費支出は大きくなる)、そのままでは必ず破綻する。それゆえ、健保から国保にオカネを移動させる仕組み (拠出金・支援金制度)は2015年以前にも存在していた。2015年改正で埋め合わせが始まったわけではない。

<細かな問題点7>
8章 医療保険制度の課題とは
「そのため、近年では国民の医療費の30%以上が、税金によって賄われています」
平成26年実績では、国民医療費 (国民の医療費って…)のうち公費は38.8%。かなりさかのぼって平成6年実績でも、公費が31.2% (財源別国民医療費)。

厚生労働省の資料

「近年、30%以上が…」は若干ミスリード?

<急ぎの方はこちらから>

意外と時間がかかった(ここまで2時間)。ふだんなら対面打ち合わせで指摘したいところだが、勝手プロジェクトなので仕方ない。

全体を通して、記述の不整合と濃淡の差が大きすぎる。最初に述べた原則に従ってコピペ検索をしたところ、「原著」が5つ見つかった。

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誰でも簡単に理解できる! 医療保険のしくみについて解説
けんぽれん 医療保険制度の基礎知識
医療保険制度の改正で、何が変わる?負担を減らすための対策とは @nifty 私のマネー術
医療保険が変わるー医療保険制度改革法が平成27年5月に成立 Ayamu地域介護 地域包括ケア応援サイト
医療保険ナビ 日本の医療保険制度の問題点 
それぞれの分担は、
「誰でも簡単に〜」: 1章, 3章, 6章,
「けんぽれん (健保連)」: 2章
「@nifty 私のマネー術」: 4章
「医療保険が変わるー医療保険制度改革法が平成27年5月に成立」: 4章・5章
「医療保険ナビ 日本の医療保険〜」7章,8章
である。

こちらの「元ライターからの告発」によれば、「参考サイトは大学病院・厚生労働省のもののみ可」とあるが、この基準を満たすもの (公的機関のサイト)は健保連 (健保組合の連合体) のそれのみ。それ以外の章は、コピペ元の記述が微妙に食い違っているために、パッチワークで作ったwelqページで章ごとに矛盾が生じる原因となっている。

以上、まともに「監修」に取り組んだとしたら、全面書き換えを要望せざるを得ないページであった。ただ、私はライター?である”khs24726″氏を責める気にはなれない。

「美容専門学校卒」のkhs24726氏にこのような重くかつ面倒なテーマの執筆を丸投げした段階で、(「元ライターからの告発」が正しければ、khs24726氏がこのテーマに立候補したところで)仕上がった文章に問題点が含まれる可能性は、通常の軽いテーマよりも遥かに高くなることは容易に判断できよう。(薬剤師や医師でも、保険制度の全容に関してさっと説明できる人はそう多くない)
最初に触れたリリースにあったように、できあがった原稿に大してはこれまで専門家がノータッチであったことと、非専門家によるチェックも不十分であったことは、このページからは見て取れる。

医療保険制度を熟知していなくてもただちに健康上の被害が生じるわけではない。ただ、よく調べれば誰でも正解にたどり着ける「制度」に関して雑な記述がなされている以上、「正解」と「不正解」の狭間が微妙で、なおかつ一般の人ではその判断が難しい医療そのものの情報については、さらに危うさを覚えてしまう。
「このページはたまたま間違えが多かっただけ。他のページは大丈夫。むしろ、誤りの多いページを恣意的に選んできたのではないか」という批判は十分に考えられる。私が逆の立場ならそのバイアスを指摘する。なので、恣意性を排除した形の「welqのシステマティック・レビュー」をこれまた「勝手」に実施しようと思う。

専門家のチェックによると「まるで使い物にならない」わけだが・・

一本の記事だけでもこれだけ出てくる。専門家がフルに集中して2時間以上かかるわけだ。金額換算しにくいが、これなら最初から書いて貰ったほうがよほど安い。医者や専門家に原稿を依頼したと考えると、1文字1円で書かせた2000文字で2000円の何十倍ものコストだ。しかも内部にも詳しい人間、さらに「日本語を校正する人間」がいなくてはメディアなんてできない。

健康や医学についてスーパー適当で雑に書かれたパクリ記事で検索上位を独占するウェルクは即刻閉鎖し、再開したいのであればきちんと確認が取れたページから公開するのが社会的なルールだと思うわけです。

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日本中で笑われてますよ!まともな校正もしてないのがモロバレ。

五十嵐准教授の最後にあるように「恣意性を排除した形のwelqのシステマティック・レビュー」をもうすぐ発表する。welqのひどさを統計学で数値化します。

そんなわけで、待て!! なのだ

先日、このインデペンデンスディの新しいのを見たのだが、まだ1週間しかたってないのに全く内容もシーンも思い出せない。認知症になったのかと思うくらい全く思い出せない。昨日、トレーラーを再度見たら少し思い出した。歴史に残る駄作だと思う。嘘だと思ったら試してください。

いままでの流れです。

DeNAがやってるウェルク(Welq)っていうのが企業としてやってはいけない一線を完全に越えてる件(第1回)

【告発も追記】やってはいけない一線を越えたDeNAのウェルク(Welq)をとりあえず直ちに閉鎖すべき理由(シリーズ第2回)

↓いまここ
東大薬学部五十嵐准教授がDeNAのウェルク(Welq)をさくっと検証した結果(シリーズ第3弾)

パクリWebスパムのウェルク(welq)はどのようにして誕生したのか(シリーズ第4回)

著作権侵害を犯罪と思わないみなさんが震え上がるビジネスモデルのご提案

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