ヒット商品のアイデアは身近にある。モノにするかはユーザー視点

2014年1月27日

たまには仕事に役に立つ話でも書こうと思います。
わたくし、毎週水曜日に月315円の有料メルマガを発行しておりまして、みなさんの質問にお答えする形式なわけですが、かなりの比率を占める質問に「なにか自分もインターネットでビジネスをしたいがどうしたらいいでしょう」的なものがあります。これが「ネットショップ」である場合は、どこでも売ってるような商材の場合は全力で否定しております。

5年前ならいざ知らず、現在は新規のネットショップを立ち上げてもよほど商材にエッジがたっていないと集客すらできません。5年前の数分の1しか売れてないネットショップも多数あるはず。理由は簡単で、B to CのEC市場は毎年10〜15%は伸びているものの、出店件数の伸びがそれを遙かに超えているからですな。また、AmazonやZOZOTOWNなどの大手で資金力のある企業の市場占有化が進み、ノウハウや資金力、価格競争力のない小規模なショップは太刀打ちできなくなってます。無料とか格安カートの新規手作りショップなんざ、月に売り上げ0というのが大多数ではないかと。よって「路面店でも普通に買える」「同じ商品を販売している強力な競合がある」場合はほぼ成功しないと言ってもいいでしょう。

となると、オリジナリティの高い独自商品ということになるわけで、易きに流れるケースでは「オリジナルTシャツ」とかになるわけだが、オリジナルTシャツなんて誰でもたいした投資もノウハウもなく作れるわけで、有名イラストレーターやデザイナーが作ったところであまり売れるはずも無い。ではいったい、小規模なビジネスでどういう具合に自分だけのオリジナル商品を創ればいいのか、そしてそれをどのように認知させるか、いい例がありましたので解説したいと思います。

わたくし、サーフィンを少々たしなむ(ショートボード)のでありますが、昨年にカリフォルニアで大ヒットして、日本に上陸したばかりの「Surf Grass Mat」という商品が面白い。実は自分でも使っております。日本にははいってきたばかりでほとんど買えない。アメリカでも製造個数が少なくて日本市場に回ってくる分が少ないからだ。いまやサーフィンやスノーボード、自転車からスポーツ観戦まで、この高価な芝マットが大流行なのです。

一見、毛足の長い人工芝のマットにしか過ぎない。しかもかなり高価である。日本の価格は税込み5000円でアメリカでの店頭よりやや高い。アメリカではこのジャンルでは問屋とか卸しのシステムが無いため「メーカー → 販売店」なのだが、日本では「メーカー → 輸入代理店 → 販売店」になるうえ、かさばるし重量があるので送料がかかるから。日本での総輸入元はこちら http://www.luvsurf.co.jp/。直販もショップでしています。入ってくる量がまだ少ないので予約殺到だそうです。「ええっ、単なる人工芝が??」と思う人にはこういう商品開発は難しいでしょう。

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こうして見るとただの人工芝。日本でもアメリカでも外観だけ似たようなのが2000円くらいで探せばある。
しかし、日曜大工センターで買ってきた人工芝を同じように使っていても「カッコイイ」とか「自分も欲しい」にならない。いいとこ休刊になった「素敵な奥さん」風の「あら、いいアイデアだわね」的に見られるだけである。どうしてそれが大ヒットになったのか

ユーザー視点で製品の詳細を工夫した

人工芝のままではクルマに積んでおくとべろんと広がって邪魔。そこでベルトで止められるようにした。

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芝部分は非常に丈夫で引っ張っても抜けない。しかも素足で乗ったときに非常に気持ちいいのであります。従来品と比較して砂をたたいて簡単にはたき落とせるし、水で濡れても簡単に干せる。このあたりの詳細にかなり工夫があるらしい。

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非常にユーザー特性を考えた商品なのだが、これだけではカリフォルニア中のアウトドアショップやスポーツショップで大ヒット商品にはならない。特にオシャレに敏感な横乗り系のターゲットに支持を受けたのにはいろいろな訳があった。

お金をかけないブランディング戦略

このサーフマットは、Made in USA。どんなに売れても絶対に中国生産にはしないそうで、手工業で月間500枚くらいしか生産していない。大きなタグがついていて、誇らしげに「Made In USA」を掲げている。まずこれがウケる。中国製の芝マットの代用では無くて、専用に開発されて作られたというイメージ作りです。日曜大工センターで売ってるものじゃないというところですね。

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次の戦略。小さな個人会社だから、スタートアップに宣伝費用は掛けられない。どうやったかというと、プロサーファーにまずは配った。日本と違って海外ではプロサーファーの社会的地位や収入レベルは非常に高く、トッププロは年収億単位。ところが配られたプロ達は「なにこれ、面白い」と使ってくれた。

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日本人の血も入る有名プロサーファーのカラニ・ロブ。

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サーフィン界のスーパースター、ケリー・スレーターもわざわざオーストラリアの大会に持参

こうなると、見た人から「これ、カッコイイ」というブランドイメージが定着した。米国製でハンドメイドでしかも便利で足に気持ちいい。バカ売れが始まったわけです。

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現在ではサーフィン、スノーボードから始まり、アウトドアやほかのスポーツにも使われています。「別にこんなんいらないわ」「普通の日曜大工センターので十分」という方は、想定顧客にはいってないのです。ファッショナブルで「こだわりのある人」にアピールするということで考えられているので、中国で製造してたくさん販売するという選択肢が無い。もちろん偽物も模造品も出てくるとは思うが、ここまでブランドイメージができてしまえば「そういうのダサイ」という認知になるわけだし、それを買う人はターゲットに入ってない。スモールビジネスでは「ターゲット・セグメンテーション」も大事な要素です。

これはスモールビジネスでヒット商品を考えるためのひとつの手法に過ぎない。しかし大きなヒントにはなります。自分しかできない「顧客視点」を持った商品作りの典型だと思う次第です。大事なのは「自分が何を作れるのか」ではなく、「ユーザーはなにを望んでいるのか」という視点だけなのです。

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