所沢のエアコン住民投票には経営視点が欠如している

2015年2月17日

昨日は朝からテレビでこのニュース見て不愉快になった。

「学校にエアコン」住民投票、「賛成」実施目安に届かず

市は2006年、付近にある入間基地を離着陸する航空自衛隊機の騒音対策として、防衛省の補助を受けて全校に冷房を設置する方針を決めた。しかし、1校に設置された後の11年に初当選した藤本市長が、「快適さを最優先した生活を見直すべきだ」「東日本大震災を機に自然と調和した生き方への転換を」と唱え、12年に方針を撤回した。

これに対する意見はネット上では
「だったら市役所も冷房外せ」
「いまどき、我慢すればいいという気合い論はおかしい」
という感情的なものが多かった。所沢市は内陸部で、特に夏は暑い。自衛隊機が上空を飛ぶので窓を閉め切る必要もあり、これでエアコンがないのは信じられない。Yahoo!の過去の天気で同じ埼玉県の熊谷市で見ると、7月の夏休み前でも最高気温30度超えが続出。2012年に至っては7月上旬で37度台続出である。この猛暑で所沢の小中学生はエアコン無しで授業を受けていたわけだ。

しかしテレビで見ていると、もちろん編集されているとは思うが、投票に来た爺様が「エアコンなんていらん。昔はなかった」とかほざいていて腹が立ってしかたなかった。この爺さんの小学生時代は校舎は木造で風が吹き抜けていたはずだし、なによりこれ、熊谷地方気象台のデータです。埼玉はここと秩父しか過去データがない。www

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クソ爺の時代といまでは、暑さが全く違うのです。それもあんたらの時代に(自分も含まれるけど)車で走り回ったり、火力発電しまくったりしたおかげの温暖化です。そしてなにより、爺はともかく、所沢市長には「経営」の観念が全くないと思われます。

経営の基本、コストセンターとプロフィットセンター

MBAの勉強でもっとも基本的なことは、企業内におけるコストセンターとプロフィットセンターの考え方です。たぶんこういう入門書には必ず出てくる。読んでないけど・・ww

企業内組織はコストセンターとプロフィットセンターに大別される。めちゃくちゃ単純化すると、コストセンターは利益を上げる部門ではないので、コストを改善することが目標になる。会社でいうと総務とか受付とか一般事務のお姉さんですね。プロフィットセンターは利益を得るためにコストとのバランスを考えながら運営する部門で、営業とか製造がそれにあたる。
足りない経営者が「工場」をコストセンターと考えて、徹底的に人件費や工場設備の投資をけちったあげく傾くというのはよく挙げられる例だが、ゴキブリ焼きそばの会社などはこの典型じゃないだろうか。

自治体も企業と同じと考えると、おのずと所沢市長に経営センスがないことが明確になる。市長の略歴を見ると教員出身。運動部の顧問経験多数。議員に当選、それからずっと政治家だ。経営センスがないのは当然だが、それにしてもどうよと思います。

まず、企業で考えるならば、学校はコストセンターではない。学校に通う子供にはしっかり勉強してもらい、将来がっちり稼いでもらって税金を払ってもらったり、厚生年金を払ってもらわないといけない。完全なプロフィットセンターである。教育費は投資であってコストでは絶対にない。
明治維新のあと、日本はとても貧乏だったけど必死に大学を整備し義務教育を制定して識字率を上げ、一気に先進国へと躍り出た。これを見ても教育は投資だということがわかる。

逆にコストセンターはどこかといえば、典型的なのが公務員などの職員だ。観光課あたりはプロフィット的な側面もあるが、印鑑証明とりにくる数人のために何人もの職員がいるような出張所など、コストセンターの典型である。そのコストセンターに金をつぎ込んで国が飛んだのがギリシアなわけですよ。

仮に市長が優秀な経営者であるならば、コスト部分は最大限の効率化を行い、それで浮いたコストをプロフィットセンターの予算に回し、プロフィットセンターは明確なKPIを掲げて最大の努力をする。

市長側はクーラー稼働日数は年間30日位、10年使用しても工事費だけでも1日あたりコストは48万円にもなり、さらに燃料費の高騰を挙げ、「教育はモノより人」の考えのもと工事費の一部を「心のふれあい相談員(16名)」の復活や「学校運営マルチサポーター(6名)」、「障害児介助員(3名)」等に3,922万円充てたことなどで理解を求めているが、いまだ、住民の納得は得られてはいない。

これはWikipediaからの引用なのでどれだけ正確かわからないが、この通りなら完全に学校をコストセンターと考えている。年間30日も暑くてぼーっとして効率が上がらないなら、小中で9ヶ月分、ほかの学校に比べて1年近くのハンデだ。なのにそれをコストとしてしか考えていない。つまり「工場をコストセンターとして考える失敗」の典型である。

学歴と収入が総論的には比例するのが明確な以上、子供の教育には最大の効率的な投資を行い、結果として将来の税収を確保する。教育熱心の自治体のイメージが浸透すれば、子供を持つ働き盛りの家庭の転入も期待できる。

福祉はこれに比べて完全なコストセンターだ。大阪のように審査が甘いということで日本中から生活保護希望者が転入してきたらどうなったか。だからといって福祉を切りつめろと言うわけではない。コストセンターに求められるのは効率化で、これによってコストを削減するわけです。そして削減した分をほかに回す。

経営が苦しいときに、プロフィットセンターの予算を削るのは典型的な経営の失敗策。コストセンターの効率をあげて浮いた分を回し、長い目の利益改善を図らないと倒産します。全国に所沢市の小中学校にはエアコンもないし、暑くても我慢しろという実態が全国に認知されたからには、住みたくない街上位にランクインは確実。ゴキブリが焼きそばに混入したくらいの勢いだということを、所沢市民はもっと自覚すべき。

おまけ。零細企業やさらには家庭の場合

ここからはおまけ。

自分が仕事先を判断するとき、実はこの考え方にけっこう基づいています。
たとえば外注のデザイナーを検討するときは、使ってる機材を聞きます。古いパソコンやソフトを後生大事に使ってる場合、貧乏ならともかくそこそこお金があるのにここをケチってる場合はかなりマイナス評価。

古い機材を使えば効率は悪くなるのは当たり前で、ここをけちるということは、仕事に対して投資しないんだなと考えます。ネットの仕事なら、動作確認やUIの確認のためにはユーザーが持っているデバイスはあらかた揃えていないと仕事にならない。スマホもサイズ別に必要だし、タブレットはもちろん、Macとwindowは両方確認するのは当たり前でしょう。会社なら当たり前だがフリーの人でもこれくらいは要求したい。特に予算高めの仕事はここまで環境に投資している人にだけ出す。

フリーの仕事でも、コストセンターとプロフィットセンターに分けて考えるとどこにお金を使うべきかわかってくる。駅から遠い綺麗なオフィスは、自分は気持ちがいいけど売上げにはつながりにくい。ならば多少汚くても、クライアントが打ち合わせに来やすい交通の便のいい部屋の方がいいかもしれない。ソファ買うなら社員に新しいパソコンを与えた方が利益につながる。フリーランスは自分自身がプロフィットセンターだから、ここを意識するだけで変わる。

家計も同じ。家庭をコストセンターと考えると何もかも切り詰めるということになりがち。すべてを切り詰めてわずかな貯金を作るより、それを元手に新たな利益を期待できることに投資した方が効率的。資格を取るとか、副業を考えるとか、やりかたはいろいろある。貧困から這い上がった人はみんなこうしているはず。

ということで、本日の言いたい放題終わります。
※当初ベネフィットセンターとしてましたけどプロフィットのほうが一般的なようで書き換えました。

このブログを書いてから、この本を電子書籍で読みました。そしたら最後のほうにまるで同じ事が書いてありました。著者は「フリーター、家を買う」の有川さんで、涙腺の弱い方はティッシュをご用意ください。悲しくて暗いストーリーではなくてめちゃ希望に溢れている物語ですけどぐっさり刺されます。

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