Webデザイナーさんは、サイトを作る人じゃありません

2017年3月16日

メルマガやってると、よくいただく質問にこういうのがあります。いいチャンスなので1回まとめて回答しておきます。同様に「いいエンジニアさんの探し方」とかもありますが・・・・・。

・・・・・・  質問ここから  ・・・・・・・

永江さん、はじめまして。2017年分から購読しております。どうぞ、よろしくお願いいたします。今回、教えていただきたいのは、いいウェブデザイナーさんを見つける方法です。妹がウェブショップで、手作り品を販売しています。おそらくサイトの作りが悪く、最初は全く売れませんでした。数年前、夫の知り合いのウェブデザイナーさんに頼んで、ショップサイトを作り直したところ、妹のブログ更新などの販促活動もあり、少量ながら、商品はほぼ完売するようになりました。
ショップはカラーミーショップです。妹がコンテンツを用意し、私が商品ページの更新とメンテナンスをしています。サイト完成後も、ウェブデザイナーさんとの関係は良好で、追加料金でサイトを作ってもらうなどしてきましたが、彼女は別の事業を立ち上げることになり、ウェブデザイナーの仕事を辞めることになりました。追加でサイトを作ってもらったり、将来、大幅にサイトをリニューアルするときなど、どのようにウェブデザイナーさんを探せばいいか、ご教授いただければと思います。お聞きしたいのは、

1) ウェブデザイナーさんを探す際に、気をつけたほうがいい点
・ウェブショップだから、〇〇は必要、など。

2) 現在のウェブデザイナーさんに支払う平均的な料金
・まるごと作るならいくら、サイト1ページではこれくらい、など。

3) ウェブデザイナーさんの適切な探し方
・crowdworksなど?

4)他にアドバイスなどありましたら、教えていただけると嬉しいです

・・・・・・  質問ここまで  ・・・・・・・

まず、「Webデザイナー」というのはかなり広義に使われていると思うので、ここでまとめてみますね。
1人の人がサイト制作を請け負っている場合、「サイト全体をデザインします」ということでWebデザイナーという言葉を使うことがあるのですが、1人で作るのにはどうしても限界があります。

というのは、「ちゃんとした」サイト制作というのは、だいたい以下の人たちでチームで制作にあたります。

○サイトの想定対象に対してのマーケティング見地に基づいて全体を設計する人
○進行を管理するディレクター(ビジュアルやコピーを発注管理)
○エンジニア(サーバ管理は別担当のこともあります)
○コーディング担当
○Webデザイナー
○カメラマン、ライター、イラストレーターなど
○SEOのアドバイザー

大きな規模のサイトでは、エンジニアやコーダーが複数になります。デザイナーもデザインディレクションをする人と、実際に手を動かす人が別々にいたりするわけです。この人たちがそれぞれのスペシャリストです。もちろん兼任の場合もあります。

たとえば、「実店舗を創る」ということを考えても同じです。集客や設計のコンサルタントにはじまり、設計士、インテリアデザイナー、基礎屋さん、大工さん、内装屋、電気工事屋、などたくさんの人がそれぞれの仕事をしますよね。でも自分で店舗をトンカントンカンやって素人ながら見よう見まねで作ってしまう人もいます。Webも同じです。

ひとりでやっている場合はコストは安いけれど、スペシャリストが大勢でやるのと比べると全体の詰めは相当に甘くなります。これは当たり前です。1人で全てのスペシャリストになることは不可能だからです。しかし「投資」というものは必ず回収する目論見がないといけないので、手作り用品を販売するのに初期費用で何百万もかけても絶対にペイしません。よって妹さんの場合はスペシャリスト集団に依頼する意味がないわけですね。

Webデザイナーさんはサイトを作る人ではない


で、ひとつ考えないといけないのは、いま、Webデザインの意味が非常に変わってきたということです。なにかというと「加速度的なスマホ化」です。

ちょっと前まではPC用のサイトをまず作って、それをレスポンシブでスマホで見た時に畳んで表示するみたいなのが主流でしたが、もうこれは終わってます。そんなこと書いてるこのブログもレスポンシブですが、これは自分のブログなんてやってる暇がないからです。ww

おそらく妹さんの手作り品だとターゲットは女性でしょうから、8割方がスマホからの流入と思います。この場合、ぶっちゃけていうとPCのデザインなんてどうでもよく、スマホでアクセスしたときのUI(ユーザーインターフェース)を作り込まないといけません。

スマホの場合、デザイン性というより、UI設計のジャンルになってきます。analyticsのデータ見ながら離脱率やクリック率を頭に入れて設計する感じです。ソシャゲのUI作り込むのと変わらないわけです。「綺麗に」「格好良く」見えるより、すぐに自分の欲しい情報にアクセスできないと、スマホのユーザーは簡単に離脱してしまいます。PCよりずっとPV数は下がるので、PCのデザインとは似て非なるものです。なにをいいたいかというと、PCのデザインからはいります的な昔風の人では今の時代は厳しいということですね。

Webデザインというより、UI設計という観点がある人。そしていまはもうhtmlで書く時代ではないのでCMS(コンテンツマネージメントシステム)をちゃんと使えるエンジニア的な知識もある人のほうがいいと思います。後述しますがスマホの販売用の優れたテーマを使えばコンビニみたいなサイトは作れるからです。

ネットショップは独特のノウハウがある

もう1点、ネットショップ、つまりECはほかのサービスと比較してかなり違う点が多いです。商品をいかに選ばせるかからはじまり、画面遷移がとても多いのでスマホでは途中で嫌になって離脱率が高くなります。こうした特性が強いので、ネットショップの制作経験というより「成功体験」がないと「単に作りました」的なことになります。

路面店でも同じで素人でも見た目が普通の店は設計できると思いますが、顧客動線を考えて設計するのはプロの仕事ですよね。それが行き着くとコンビニの導線になるわけで、どのコンビニもだいたい陳列棚が同じなのはそれが突き詰められて分析されているからです。

つまり、「個人でやってる人」にネットショップを作ってもらうのであれば、その人に「ネット販売の成功体験」がないと非常に不利。できれば「自分でネットショップやってて儲けてる」人がいいでしょう。受託で作ってるだけだと効果が分からないので、見た目だけショップになっていても実際にはダメダメなものも多いです。

次に、「従来のデザイン」より「UI」を意識できる人。こういう能力が本当にあれば1人で会社立ち上げてやっていけるので、クラウドワークスとかで探すのはめっちゃ難しそうですよね。仕事ができる人はバリバリと仕事が入ってるのが普通だからです。個人でやってて儲けていそうなサイトのオーナーに「誰にやってもらっているのか」相談するのもありかと思います。

妥当な金額はとくにありません

で、いちばん困るのが制作コストですよね。
ぶっちゃけ、サイト制作も実店舗の建設も、かかるコストは人件費です。
プロのチームで取りかかる場合、各自の単価は素人よりずっと高く、時間もしっかりとかけます。なので必然的に金額は高くなります。

逆に1人でやってるような人は、キャリアがほとんどないのに見よう見まねの人なら格安だし、そこそこの経験がある人ならそこそこのコストです。ただ、プロチームで取りかかるよりはずっと安いでしょう。

なので平均的な金額とかはないんです。
レベルの違いによって金額は変わってしまう。美容師さんのカット代だって格安なら2000円くらいのところもあるし、カリスマなら1万円以上取るでしょう? で、仕上がりはやはり全く違うでしょう?

なので、いちばん実現性が高いのは、そのショップがいくら儲けることができるのからの逆算です。月に10万円儲けるなら半年で償却するつもりなら60万だし、月に5万円なら30万ですよね。そこから算出して、それでやってくれる人を探すしかありません。単価の安いラーメン屋やるのに内装に何千万も掛ける人がいないのと同じです。

で、結論で言うと、手作り品をネットで販売するのに、自分でサイト運営するのはもう時代的には終わってるのかなとも思います。女性ターゲットで販売なら、いまならメルカリに出品というのが一番簡単でいいんじゃないかな。買う方もクレジットカードや個人情報の漏洩が怖いから、新規のショップにはなかなか自分の情報を預けづらい。さらにスマホユーザーはクレジットカードの入力で大量に離脱します。

サイト制作にコストと手間をかけるなら、その分たくさん作ってどんどんメルカリに上げていく方がよほどビジネス的には成功しそうな気がするんですが、身も蓋もない回答ですみませんです。もちろん将来的に妹さんのビジネスを拡大していって、これでばんばん儲けようという場合は、それを見越して投資して、ちゃんとしたサイトを作り、Amazonやメルカリと在庫を連動する手もあると思いますが。

ふとみたらかん吉くんのこの本がAmazonの月替わりのセールで288円になってた。ブログ書いたり集客用コンテンツ作りたい人は読んでおいた方がいいよ

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