「法律的には問題ない」のカネカさんはどうも法律と世間の常識を知らないように見えるので統計データと突き合わせてみた

2019年6月7日

先日から賑わっています、この話題。リアルタイムで奥さんのtweetは見ていました。

「夫が育休明けに転勤命令⇒退職」 告発ツイートでカネカに批判殺到

カネカはたぶん就活対策として、こんなコマーシャルをバンバン流してました。しかしこれで知名度が上がっていたので炎上したわけですね。

はしょりますと

1 カネカは育休をアピールして専用ページもあった
2 夫が4週間の育休を取得した。家を建てて引っ越した直後。
3 育休から復帰した翌日に関西に転勤を命じられた
4 労働基準監督署や都労働局に相談してもだめで結果として退職

これを奥さんがtweetしたことで炎上。という流れです。育休をアピールしていたページは炎上しはじめた日曜に突然削除されたということだが会社側は否定。キャッシュはあるのだが、どうもステージングサーバのようで正式には公開していないものらしい。

ブログで書いて欲しいといろいろ言われたけど、一方的な言い分だけで無理なので会社側の反応を待っていたら・・・。

カネカが「育休明け転勤」問題に公式見解「当社の対応に問題は無いことを確認」

法律的になんら問題はないという見解が出ましたのですこし突っ込んでみます。まず、日本の企業の転勤についての厚労省の報告データを見てみよう。


まず、大企業ほど転勤が多いのが明白になっている。就活生は転勤が嫌なら拠点の多い大企業は避けた方がいいということ。もっとも転勤が多いのは建設業、つまりゼネコンですね。

転勤の目的は社員にキャリアを積ませるためという回答が一番多い。知らんけど。

でね。ここからが大事なのであるが、転勤の前に打診してくれる会社が多いわけです。

国内転勤の場合、「2週間超~1ヵ月前」が34.9%でもっとも高く、次いで、「1ヵ月超~2ヵ月前」が 32.5%。打診無しのケースがどれくらいあるかは統計がないので不明。でもね・・・・打診するところは相当前から打診するのが普通のようです。ただし社員の希望が通るところは2割くらいですな。

結婚しているのに単身赴任になるのはぱっと見、半分くらいかな

当たり前ですが、転勤でメンタルに不調をきたすケースが2割くらいもあるわけですよ。

そしてかなりの会社は転勤させるにあたっては本人の事情を考慮して、ケースによっては対象から外すと答えています。

妻の出産で夫を転勤対象から外すのが19.4%、妻が働いていると外してくれるのが24.5%、持ち家の購入だと21.2%です。今回はこの3つが重なっていたわけね。

カネカはもともと転勤が多い企業らしいし、「酷い」という反応とは別に「サラリーマンなら当たり前」「嫌なら辞めろ」という声もけっこう上がっている。新聞社や全国に営業所が点在する企業ではかつては転勤はごく普通であった。今回は持ち家を買った直後というが、記事にもあるが家を買うと会社を辞めづらいので転勤の辞令を出しやすいというのはよく言われた。しかし転勤してローンと家賃を二重に払うことになるのでかなり負担が大きく、持ち家の借り手を見つけたりも大変だ。

現在の価値観だと地方転勤は「故郷へのUターン希望者を募る」か、現地採用するという企業が増えていると思う。残業なんかより小さい子供を連れての転勤の方がよほどキツいし、今回は奥さんも働いているから奥さんのキャリアもそこで終えろということになります。法律的なことより人道的にどうかという話です。

今回のケースでは事前の打診もなく、他の企業なら考慮する「持ち家」「育児」「共働き」も一切考慮せず、いきなりの辞令だから、カネカさんの転勤辞令はかなり荒っぽい感じがするんですよ。

そして・・・・違法性の部分だが

結局、夫は上司や人事部、労働組合を交えた幾度かの話し合いの末、5月末に退職することになった。退職前には30日ほどある有給休暇を取得したいとも訴えたが「きちんと引き継ぎをして5月末で退職するように」と言われ、4日間しか取ることができなかったという。

これは違法じゃないの??

法律では「年次有給休暇を取得する日は、労働者が指定することによって決まり使用者は指定された日に年次有給休暇を与えなければなりません。ただし、労働者の指定した日に年次有給休暇を与えると、事業の正常な運営が妨げられる場合は、使用者に休暇日を変更する権利(時季変更権が認められています」 厚労省
となっておりまして、労働者が取得したい有給を会社は拒否できません。4日間しか取らせなかったらこの点は違法ですわね。

そして

「育休前に異動が必要と判断していた」が、「内示前に育休に入ったため育休明け直後に内示することとなった」

電話でも文書でも知らせる手立てはいくらでもあったろうに、育休終わって出社したら「転勤だから」では育休取る社員を見せしめにしたと言われても仕方ない。小さい子供が2人いて奥さんもキャリアをもっているわけだから、単身赴任では無理。転勤させるなら奥さんに退職しろということだから、そもそも「女性が働く」ってことを軽んじている会社と言わざるを得ない。「女性が活躍し、多様性を更に活かせる職場をつくりあげるために」と採用ページで謳ってるのは自社の女性に限るって事になる。

でね。カネカのリリースは「違法じゃないから良いだろ」感が満載なのであるが


調べてみました。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
第二十六条 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。(再雇用特別措置等)

罰則規定がないから守らなくていいということはないよね? 遵法意識の問題だよね。でもって平成29年3月30日に厚労省から出たという資料も読んでみました。

[a] 個別の調整
33. 転居を必要とする異動の計画を作成するにあたり、上記①[b]で把握した状況を参照し、個々の労働者について必要に応じて転勤の時期や場所に関する調整を行うことを検討する。調整の具体的内容としては、転勤対象の候補者を変更すること、転勤の時期をずらすこと、通勤可能な範囲の異動で代替することなどが考えられる。

[b] 転勤対象の候補者への打診
34. 労働者が転勤の対象として候補となった時点において、労働者の事情に変更がないか等を確認し、この段階で労働者の事情が判明した場合には、個別に対応することが可能か検討することが考えられる

[c] 転勤対象者への告知・説明
35. 上記②[a]・[b]を経て、最終的に決定された転勤については、当該転勤の対象となる労働者にできる限り時間的余裕をもって告知することが重要である。
36. その際、上司や人事部門から、上記②[a]・[b]の調整結果を含め、当該転勤の趣旨や転勤後に期待される役割などとともに、赴任旅費・単身赴任手当等の諸条件について説明を行うことが望ましいと考えられる。

要約すると、社員を転勤させるのであれば、その転勤が会社と社員にとって必須なものかどうか、そして将来につながるかどうかをよく判断して、事前によく話し合うこと、そして時間的な猶予を持って告知するべしとされていますな。

要するに、上の調査などでも転勤の負担が非常に多いと言うことが↑の調査でも明らかになり、厚労省としては
転勤は社員にとって負担だから充分配慮するように
というのをリリースしているわけです。

で、「転勤は会社と本人にとってどうしても必要な場合にしましょう」とありますが、今回のケースでは無理だから退職に至ってしまった。ということは退職してもいいから辞令出したっていうことになり、やはり見せしめと言われても仕方ない・・・・あくまで個人の感想です。

とまあ、いくら
カガクデ
ネガイヲ
カネエルカイシャ
をアピールしても

カゾクノ
ネガイヲ
カナエナイカイシャ

の認知をドカンと上げてしまったわけで、いまの新卒募集ではかなり苦い水を飲むことになると思われます。応募してくるのは他を落ちまくった子とか、そもそもリテラシー低くて今回のニュースも知らないとかそんなんばっかりになりそう。
リリースもあんな上目線ではなくて、もっと「今後は改善します」にしておいたほうがよかったのに後の祭です。

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