日本の厳しい解雇規制を緩和したら給料は上がる? の課題と提案

2019年10月1日


というツイートをしましたら、賛同多数でしたがよく分からない人にもしつこく絡まれた。消費税で給料が下がったりデフレになったり不況になるんなら、日本は先進諸国でもっとも消費税率が低いわけだが、他の消費税20%以上の国は給料も下がってないしデフレにもなってないし不況にもなってない。

滞仏日記「フランスはなぜ消費税20%なのか」

ケビンはフランス以外の国の消費税率について説明をしはじめた。デンマーク、ノルウエ―、スエーデンなどの北欧は消費税25%だった。中国も17%、イタリアは22%、・・・。「先進国で一番消費税の少ないのは日本だ。辻、お前、どう思う? なんで、日本人は怒るのか、俺たちは知りたい」

で、消費税はおいといて、「最低賃金をあげたらいいんだ」っていってくる人ら。地域別最低賃金額×1.15未満の賃金の一般労働者は全国で4.7%(平成26年)。そんな話をしてるんじゃない。全体の話をしてんだ、全体のだ! ちなみに韓国の文大統領が最低賃金をどかっと上げたら中小零細がすさまじく倒産して失業率がドカンと上がってる。最低賃金さえ払えない会社は倒産しろというのは賛成だが、最低賃金の職場でしか働けない人たちが、そういう職場が倒産したからってもっと高い賃金の職場に転職できるのか。できるならとっくにしてるだろう。

共産党の主張みたいに最低賃金を1500円にしたら、最低賃金の例外がある特定産業では若者はみんな解雇され最低賃金に縛られない65歳以上ばかり雇用される。つまり高齢者優先ということで、さすが高齢者の支持が高い共産党だけあります。最低賃金は徐々に上がっているが急に上げたら職場がなくなって大変なことになる。

話を解雇に戻す。
まず日本の解雇については以下の解雇は違法です。

(1) 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇(労働契約法第16条)
(2) 労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労働基準法第3条)
(3) 業務上の疾病による休業期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条)
(4) 産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条)
(5) 解雇の予告又は解雇予告手当の支払いを行わない解雇(労働基準法第20条第1項)
解雇をする場合には、少なくとも30日前に予告するか、また、予告を行わない場合には、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要です
(6) 労働者が労働組合の組合員であることや、組合に加入したり組合を結成しようとしたことなどを理由とする解雇(労働組合法第7条第1号)
(7) 労働者が労働委員会に対し、不当労働行為の救済を申し立てたことなどを理由とする解雇(労働組合法第7条第4号)
(8) 女性労働者が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇(男女雇用機会均等法第9条第2項、第3項)
(9) 労働者が育児休業、介護休業の申し出をしたこと、又は実際にそれらの休業をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法第10条、第16条)
(10) 労働者が労働基準監督署などに対し、使用者の労働基準法違反や労働安全衛生法違反の事実を申告したことを理由とする解雇(労働基準法第104条第2項、労働安全衛生法第97条第2項)。
労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたこと、又はあっせんを申請したことを理由とする解雇(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条第3項、第5条第2項)。
労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたこと、又は調停を申請したことを理由とする解雇(男女雇用機会均等法第17条第2項、第18条第2項)

特に問題なのが(1)で、「解雇手当さえ払えば自由に解雇できる」というお馬鹿自称経営者にも絡まれてブロックしたが、できるわけないだろ。www 相手が分からないから黙ってるだけで裁判起こされたら100%負けるわ。
「客観的に合理的な理由」があって、しかも1ヶ月前に解雇予告をするか、または1ヶ月分の給料を払えば解雇できるんだが、この「客観的に合理的な理由」というのが難しいんだよ。

仕事ができない
仕事が遅い
やる気がない
仕事をさぼってゲームやってるようだ
他の社員の仕事の邪魔をする
営業成績が上がらない
身だしなみがだらしなく周囲に迷惑

みたいなのは「客観的に合理的な理由」にならない。経営者が勝手に思ってるだけかもしれないから。さらには「備品をネコババした」みたいなことでも本人が意図的にやって警察に逮捕されるくらいでないとダメです。間違って持ち帰っただけかもしれないし、本人が否定したらなおさらです。
わたしもランダーブルーの前の会社(最大で従業員30名、資本金3億)のときに3週間くらい無届け欠勤したのが2人出て労基署に行って詳しく聞きました。さすがに3週間の無届け欠勤だと解雇理由に相当すると認めてくれましたが、1週間程度じゃダメですねってそのときに言われました。

しかし世の中にはこうした法律を知らず、社長に文句を言ったら「明日から来なくて良い」と言われてクビにされたという人もいると思います。そういうときは労基署に行けば会社に指導が入り、裁判したら慰謝料をふんだくれます。特に土建屋や零細のDQNワンマン社長は無視するケースも多いので、不当解雇の時は痛い目見せた方が良いです。

問題は経営者がちゃんとしていても、「仕事ができない(する気がない)社員、会社に不要になった社員をクビにできない」ということです。時代と価値観が変わったのにこれができないから大手メーカーなどは隔離部屋に入れて仕事を与えず、自分から辞めるというまで嫌がらせをしたりするわけです。簡単に解雇できるならしますって。w

なんでこんな法律ができたのか

ハリウッド映画などでその場でクビになるシーンを見ると思いますが外資系では普通だそう。リクナビで詳しい記事がありました。

なぜ、日本は解雇が難しいのか?―海老原嗣生氏が語る「人事管理の側面から見る日本の働き方」

欧米型雇用というのは、原則、ポストがなくなったら整理解雇が可能だ。また、社内の中に空いているポストがあっても、平社員クラスであれば、異動ではなく、あそこが空いているから応募したらどうかと斡旋する形になる。(なお解雇が盛んな米国でも、最近は有無を言わさぬロックアウト型の解雇などはよほど年収の高い人が対象だそう)
今のは整理解雇の話だが、指名解雇でも同様だ。指名解雇はいわゆる能力の不足、職務遂行能力の欠如による解雇で、本人の問題で能力がないからやめさせるというものだ。日本型雇用の場合、たとえばこの人に営業能力がないとなっても、「営業で雇ったわけではないですよね。会社に入るというということで雇って自由に異動させている。じゃあ経理や人事など、営業に関係のないところで再起させてください」と言われてしまう。これが欧米の場合、基本はポストだから、仕事ができなければ解雇できる。

もちろん日本型も日本型でいいところはあるわけだが、あくまでこれは終身雇用で性善説の場合。会社にクビにならないギリギリまでサボりまくろうみたいな社員がいると、他の人たちがそいつを食わすことになり、真面目に働いている人が馬鹿を見る。企業は怖がって正社員を採用せず、バイトやパートを増やす。おかげさまでバイトやパートの時給は高騰しています。これは社会保険料の高騰も理由のひとつです。社員を雇わずに規制内の時間でパートを複数雇うわけです。


出典

解雇規制が緩くなると社員の給料はあがるか

物理的に考えて、働いていない社員がいなくなれば利益が出る。だから給料は上がる。サボっていれば解雇されるならみんなもっと頑張るようにもなるから各自の能力は上がり、企業の利益効率も向上する。企業はできない社員は解雇できるわけだから、現在より正社員比率を高めようとする。だから正社員の給与を上げて募集する。いまは社員よりパートやバイトのほうがリスクが小さいので高い給料で募集するという逆転現象が起きているわけです。

まあ、この点についてもよく分かってないのが、「派遣切りした企業の社員の給料は上がってないじゃないか」と言ってきたりしたが、派遣はそもそも人員調整のためにいれてるのでそれの増減で社員の給料変えるわけないじゃんということも分からないらしい。社員を雇うリスクの話をしてるんだよ!

悪質な経営者をどうするか

しかし、ブラック従業員にお引き取り頂くために単純な金銭解雇を導入すると別離問題が起きる。ブラックDQN経営者の存在である。

エロ社長の誘いに乗らなかったから解雇とか、まともな社長でない経営者が濫用する恐れが出てくる。アメリカでは解雇が楽なのは公民権を侵害するような解雇をすると懲罰的損害賠償を課せられるという点にある。また金銭を払えば解雇できるだけにすると本当に不当な解雇の時に争えなくなる(わたしの弁護士さん談)ので、なんらかの不当解雇への歯止めが必要なのは確かです。

金銭解雇だけにすると、その中の社長はまともな人間ばかりじゃないから、濫用してめちゃくちゃやるヤツも出てくるはず。または「勝手に解雇して良いんだ」と自分の都合の良いように解釈する馬鹿社長とかもね。
これをどう防ぐかというのが上のリクナビにありました。スウェーデン形式です。
まず欧米では試用期間は2年くらいあるのが普通。日本は3ヶ月とかが多いよね。この期間は日本もそうだけど比較的解雇は楽。2年掛けて能力を見極めなさいと言うことです。

解雇通知は、勤務2年目までの人で1ヶ月前に通知、2年から4年の人が2ヶ月前、4年から6年の人が3ヶ月前、10年以上の人は6ヶ月前まで

67歳に達した月末まで継続雇用される権利を有する

解雇通知に違反があった場合、損害賠償として、勤続5年未満の人で6ヶ月分、5年以上10年未満の人で24ヶ月分、10年以上の人で32ヶ月分を課せられる

なるほど。企業は2年間でその人に適正があるかを見定める。この期間は解雇は1ヶ月前に通告するだけでよい。勤務期間が長くなればなるほど権利が増していく。そうはいっても勤続20年でも半年前までに通告すれば解雇できる。長年いるうちにだらけ癖がついたような人もこれで解雇できます。

どうでしょう。このスウェーデン形式なら終身雇用の習慣がまだ色濃く残る日本でも受け入れられやすいし、労使双方共に納得でき、トンデモ経営者の排除にもつながると思うんです。解雇通知に違反すると凄い金額になるの。

しかし大企業は人員整理のために退職金2000万上積みして早期退職を募ったりするわけで、これが通るとそんなことしなくても半年前に解雇通知を出されると辞めないといけなくなる。大企業の労組は一斉に反発するでしょう。しかし、大企業だって仕事をろくにしないで遊んでいるおっさんがめちゃくちゃ多いってTwitterでたくさんの人が言っている。その人らのせいでまともに働いている人の給料が押さえられているわけですが、いまやグローバル社会の中では

きちんと働くと、それだけの見返りがある組織

でないと生き残れない。遊んでいるヤツのコストが上乗せされたら競争力を失うのである。それよりそういうのを省いてきちんと働くヤツの給料を上げた方がよほど良い。

野党は解雇規制の緩和というとギャーギャー反対しそうだが、きちんと日本の将来を考えて、可能なら給料を上げる別の方法を提案してください。最低賃金云々はなしでね。全体には関係ないからさ。あと、いくら給料が上がってもいまのペースで社会保険料が上がっていけば手取りはどんどん下がるから何の意味もない。これもセットじゃないとダメだと思うよ。

「消費税は全年代にかかるから年代による不公正を是正」に対する「貧乏人ほど負担が重くなる」の根本的な間違い


格差のない社会というのは逆に言えば努力が報われない社会でもある。必死に頑張った人とサボりまくってタバコとパチンコに金を溶かしている人では格差が生まれて当たり前なのだ。もちろんそこには本人には責任のないケースもあり、それは救済されるべきとは思う。が、競争のある資本主義社会だからこそ経済は伸びて生活も豊かになるわけ。Googleの給料が2000万超えてると話題になっているが、タバコ吸ってパチンコしてる暇なんざ、彼らにはないと思うけどね。

ブラック企業アナリストの新田さんが、ブラック社員に切り込んだ話題作。まだ電子書籍にならない。早くして。w

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