Amazonマーケットプレイスの、65万件もの1円本の仕組み

2013年1月7日

正月早々、出版社のかたにとってはろくでもない報道

出版社、書店、取次不況の実態…新刊の7割が返品、コンビニでも雑誌売れない

というのがYahoo!ニュースに流れてました。

 

こちらの報道によりますと・・・

出版界の統計データを調査する出版科学研究所によると、今年1~10月期までの書籍・雑誌の推定販売額は前年比3.2%減の1兆4578億円と、大震災の影響で落ち込んだ11年の実績を下回るかたちで推移している。落ち込み幅は書籍よりも雑誌のほうが大きく、書籍は同2.3減、雑誌は同3.9%減ほど。11月期、12月期が11年と同水準で推移したとしても、12年は1兆8000億円には届かず、1兆7000億円台に落ち込むことが予想されている。しかも、3年後には1兆4000億円台にまで減少することまで予測されている。

で、毎年3.9%が複利計算で減っていくと考えると、10年後には現在の67%までマーケットが萎んでしまう。雑誌は特にスマホやネットで十分だという人が増えているということが大きな原因のひとつかも。
ところが以前、このエントリで書いたように、実は日本人の読書時間は減っていないのである!

読書時間は減っていないのに、新刊は売れない。その原因の大きなひとつに、上記エントリでも「Amazonのマーケットプレイスで中古本を買っている」ということをデータ付きで挙げた。普段からAmazonで買い物している層は、当たり前の感覚だ。そのためにもアメリカなみに電子書籍の価格を下げて、Amazonのマーケットプレイスと競合させるべしと常々言ってるわけでございます。

で、ここからが今日の話題。Amazonで本を買おうとすると

1yen

こんな感じで、1円で買える中古本が多数あることに気づく・・・・もちろん買う側はいくら1円でも250円の送料がかかるので251円なので、電子書籍をぶつけるなら最低価格は251円でいいことになります。まあそれはそれでおいといて・・・

なんで出品者は1円で売ってるんだ??

と、不思議に思ったことはありませんか。1円で売るくらいなら捨てた方が送料もかからないし、どうして売るんだ??と思うのが普通です。

それにはこんなからくりがあるんですなぁ・・・

Amazonのマーケットプレイスで本を売ると、Amazonからは発送手数料として250円がもらえるのです。1円本をAmazonで販売すると、実際に振り込まれる額は、送料の250円をプラスして、手数料を引くと191円になります。
発送費は自己負担なので梱包に20円、送料に80円かかるとして91円の粗利になるわけです。(ただしこれは月間4900円を払ってプロマーチャント登録をした場合で、そうでないときは成約手数料100円を取られる)

Amazon側は客からは251円を回収し、せどりに191円を支払うので60円の粗利。どれだけマーケットプレイスに1円本が出品されているのか・・・中古本で価格が1円のものは

1

なんと、65万件もありました!!!

【出品者】 そもそもの仕入れはブックオフで、しかもたぶん105円で買った本です。これを売れないから1円にしている。Amazonで販売しても差し引き15円くらいは損してます。

【Amazon】 1円本が売れても60円の粗利です。運用費考えたら赤字かもね。

【読者】 ブックオフに行ったら105円の本を251円で買っているわけだから、2倍以上の価格で買っているわけです。

【出版社】 マーケットプレイスがなかったら新品を買ってくれたかもしれない客を失って機会大損失。

【著者】 ぐるぐると中古本が1円で回って印税も入らず泣きっ面に蜂。貧乏一直線

ぱっと見、一番損をしているのが出版社と著者で、Amazonが一番たいしたことないように見える。では誰も得していないのに、どうしてAmazonはこんなことをしているんだろう。Amazonが60円の粗利を稼ぐ為に、せっかく書いた本の印税がもらえない著者、そして返本の山に苦しむ出版社の姿が浮き彫りになって来るわけです。

わたくし思うに、Amazonは顧客の自社サービスへの依存率を高めるためにやっているんだと思います。一部家電も仕入れ価格を割って販売し、日本の量販店はその影響をもろに食っていると報道もされている。今の目先だけ考えれば安く物が買えていいなという消費者が大半だろう。しかし売り上げはみんなアメリカに持って行かれ、日本の流通が大打撃を受け、出版社が先細りになって新刊が出なくなってくることまではなかなか考えない。

これを防ぐには日本の出版社が一丸となり、新刊ではない電子書籍の価格を251円まで下げ、マーケットプレイスを潰すくらいの戦略を立ててくれないとこのままじゃ座して死ぬばかりです。

日本の旧態依然とした出版社の経営陣の皆さま、五味川純平の「ガタルカナル」読みました? 日本軍司令部と重なって見えてきますよ。あっ、くれぐれもマーケットプレイスで買わないようにお願いします。とはいいつつ、楽天は新品が全部売り切れで電子版もないので中古本のリンクです・・・

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