日本酒を輸出は大きなビジネスにはならない理由

2018年4月10日

ホリエモンのブログを見て、それにかぶせる本日のエントリー

日本酒で起業希望者にホリエモンがキレた理由「1000億儲けたいとか言う奴が一番嫌い!」

自分もまず金のことを言うヤツは大嫌いなのだが、

「三重県と秋田県の蔵元を知っていて日本酒の輸出業を始めようと思ってます。過去の質問で、『世界中に日本の酒造を紹介するビジネスは、まだまだ小さいので伸びると思う』と回答されていましたが、参考までにどこの国で日本酒の需要を実感されたのか知りたいです。また酒造を紹介するとは、海外向けに物販で日本酒を輸出するという意味なのか、それとも専門ECサイトを立ち上げ海外ユーザーに直販するということなのかも気になります。私は20代前半の若者で、孫正義社長のように『30代で1000億の軍資金を』と考えています。日本酒の輸出市場にそのレベルの可能性はあると思いますか?」という質問。

というなにもわかってない若者からホリエモンに来た質問なのに永江式の回答をしたいと思います。
ホリエモンの言ってることは概ね正しいのだが、海外展開の一風堂では日本酒はすでに置いているらしいです。こってりしたラーメンには日本酒は合わない。ビールでしょと思うがそれは置いといて・・・自分なりの答えをまず・・・

ねーよ!!

とまあ、冷水を掛けます。マーケットというものを全くわかってないからです。実は日本酒は国内の消費量はかなり減ってますけど輸出は増えています。

しかしたったの140億・・・・・質問してる若者のように1000億儲けたいなら利幅が少ない日本酒だと数兆円くらいは輸出しないとダメで、それ日本中の日本酒を輸出してもとうてい足りない。www それくらい自分で調べろっての。

実は自分、かなり前ですが日本酒のサイトを運営していたことがあり、第三代日本酒党総裁の稲葉さんのお宅で品評酒をご馳走になったのが自慢なのです。ww

この若者をA君としますが、たぶんA君はネットの時代の走りのときにIBMだったと思うがテレビCMで

ジジイ酒屋がネット販売を英語で始めたら海外から注文殺到

というTVCMが炎上して放送中止になったことをしらんのだと思います。
これには理由が2つあり、まずは酒販免許と通販の酒販免許は別なこと。そして海外に加工食品を輸出はそんなに簡単じゃないということを広告主が知らなかったことでした。

食品や薬品、体に触れるものについては各国とも非常に厳しい規制をしています。たとえばアメリカに幼児用の鉛筆を輸出しようとすると、幼児だから口に入れるかもしれないということで使っている塗料などのデータをすべて提出し、それに使われている顔料などがアメリカの基準に適合しているか確認する必要があります。その顔料が日本国内しか流通していなければ分析データまで出す必要がある。アメリカで許可されていないものであれば輸出はできないのです。

日本にも同様に厳しい規制があり、知人がハワイから地元のシャンプーや洗顔料などを輸入しようとしたけど、膨大な資料の提出を要求され、けっこうな金額をかけて出したものの、10品のうち半分くらいしか輸入許可が下りなかった。そんなもんなのです。ましてや口に入れるものならもっと厳しい。

日本酒を輸出しようとすると同様に添加物や成分分析や瓶までの詳細なレポートを現地語で要求される。ところが日本酒のマーケットは

5000kl以上の大手が13者でこれが全体の50%のシェアを持っている。残りの1550者は零細なのです。99%は中小零細で残りの1%が販売数量の半分を生産しているという非常にいびつな構造。2010年時点で資本金3億円以上かつ従業員300人以上はたったの5社だけで、ほとんどは地域の中小零細れ。京都、兵庫の上方酒が生産量の半分を占めるわけ。

ホリエモンは文中で「海外のレストランでは大手メーカーの大して美味しくない日本酒しか置いていない」と書いていますが、それもそのはず、上記の膨大な書類を各国ごとに揃えて採算が合うようにロットで輸出できる生産量のあるのは大手5社くらいしかないわけですよ。海外のレストランで見かけるのは月桂冠、黄桜、白鶴、大関、くらいですな。
零細の酒蔵では申請書類を現地語で制作して申請する能力もなければ、このコストを載せて輸出するキャパもない。輸出どころか英語もさっぱりでしょう。輸出先の国の政府に必要な手続きを問い合わせて現地語で書類なんて絶対に作れない感じなのよ。

ただ、「大手メーカーの大して美味しくない日本酒」というのは当たってる点とちょっと違う点がある。大手メーカーって実は技術力は凄いのです。大学で醸造を学んだ開発者がいて、美味しいものをコストを考えずに作ろうと思ったらいくらでも作れる。金と手間を掛けてとんでもない品評酒を出してくるから受賞もする。しかし実際に販売するものはシステム化された工場で大量生産で原価を抑えたものになるわけですな。でないと大企業はペイしない。コレ全部日本酒党総裁の請け売りです。ww

金賞受賞酒が、必ずしも「おいしい」とは限らない!? ──「全国新酒鑑評会」の実態と意義

日本酒が海外で売りにくい理由 2

さて、清酒の生産量はずっと下落しているが、純米酒などの高級志向のものはその中ではシェアを増やしている。

で、海外の一流レストランでも「ライスワイン」として日本のブランドの清酒を置いているところもけっこうある。お値段はぶっちゃけ、めちゃくちゃに高いです。高級ワインと良い勝負です。なんでそんなに高くなるかというと

日本酒の原価は恐ろしく高いから

なんですよ。また、ブランドの日本酒は大量に生産できないので小ロットで輸出するからめちゃくちゃに高価なものになるわけです。重いしね。輸送コストも凄い。

これは小売りで1890円の普通酒一升ですが、販売店のマージンはたったの437円。たったの23%です。魚屋とか八百屋の利益率は50%あるらしいので酒屋の利益率は本屋と変わらないのだ。しかし本屋と違って再販制度がないから、10本仕入れても2本残ったら利益0なんですよ。日本酒、まじで儲からない。酒蔵、つまりメーカーの利益率も30%しかないが、これは大手の酒蔵だから中小零細だともっと少なくてもう趣味でやってる世界なの。

そして製造原価の半分が瓶代で半分が米代。どこにコスト削減の余地があるのか・・・・www

さらにワイン720mlあたり必要な葡萄は約1.2~1.5kg。1升(1.8L)の日本酒を作るのに必要な白米は0.77kgといわれているので720mlなら白米0.3kgです。しかしお酒用は大粒の品種で我々が食べているものとは違うのでとっても高いのです。しかもそれを精米して削ります。日本酒をもっと生産するには米から作らないとダメなんだわ。ww 日本の農家は高齢化でほぼ絶滅状態なのに。


日本酒専門店は儲からないは飲食店経営でも同じ。高級化して単価をあげるかしかない。瓶の単価が高いから酒蔵と直取引してもっと大きなステンレスやホーローの樽を用意してそれで納品して貰ったらどうでしょ。

そんなわけで実は・・・・大手メーカーはすでに海外で現地生産しているのです。

ホリエモンがいってる「海外で飲めるのは大手メーカーのたいして美味くない酒」というのはほぼ現地生産なわけですわ。

じゃあ、日本も零細の生産するお酒はもっと値上げすれば良いじゃんと思うだろうが、生産コストの安いワインや焼酎と比較すると、単に値上げすると非常に高く見えてしまう。高くしたらビールや焼酎やウイスキーに流れてしまう。ワインやウイスキーと違って売れ残ったら寝かせるということもできないから(できることはできるんだけど)、高くして売れなかったらすごいリスキーなわけ。だから

日本酒は消費者には超お得

なんです。いもやの天丼くらいお得な酒なの。だって原価考えて価格付けてないんだもん。日本酒扱ってる酒屋さんも卸屋さんもまさに趣味レベル。こりゃ後継者不足だわってことになる。我々としては日本酒をなくさないためにもどんどん飲んであげようよというしかない。

生産量も利益率小さくて儲からないから余ったら大赤字だからギリギリしか生産しない。海外に輸出しようと思ったらまずは生産量を増やさないといけない。そのためには生産量の決まってる米を買い付けして生産を増やさないといけない。それで売れなかったらリスクが高すぎて誰も本気でやらないわけですよ。いもやの天丼を全国チェーンにしようといってるようなもんですよ。

少子高齢化で日本のサービス・飲食業はどうなるか。「いもや」の例を見るともう答えは出ているぞよ


そんなわけで、日本酒を海外に輸出して大儲けしようっていうのは、いもやの天丼のフランチャイズ創って大儲けしようというのと同義語の空想です。文化を輸出するという意味はあるけど儲ける気でやることではない。むしろ、

本当の日本酒は日本でしか飲めないから
日本に来いや

くらいのインバウンド対策で使う方が正しい商材に見えるわけです。実際、中国の富裕層はそれを目当てに来る人も多いらしいよ。地方自治体も特産の銘酒があるなら「この銘酒を飲みにうちにきて」くらいのキャンペーンやればいいんだよ。
ということで、将来の夢を持つのはいいけど、ホリエモンに聞く前にちょっとは自分で調べようぜってことです。

参考
日本酒をめぐる状況 農林水産省
清酒をめぐるイノベーションとバリューチェーン
清酒業界の現状と成長戦略 DBJ(日本政策投資銀行)

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